高度技術者育成プログラムProject

©JAXA

概要

近年の欧米諸国での宇宙ベンチャー企業の活躍に牽引され、国内でも多くの企業が宇宙開発・利用に力を注いでいます。しかし、現状では「独創的」な設計・製造を行う研究者ではなく、高品質な人工衛星の設計・製造・運用を支える「高度技術者」の不足が問題となりつつあります。千葉工業大学では2021年度から我が国の宇宙産業の基盤を支える高度技術者の育成プログラムを開始しました。

1辺が10cmの立方体サイズからなる重量約1kgの「キューブサット」(※1)と言われる超小型衛星が、2003年以降多くの国で多数打ち上げられるようになってきました。電子技術・通信技術・電力技術の向上により、これら超小型衛星は一部の分野では大型衛星にも匹敵する性能を示すようになりました。また量産した場合には1機あたりの製造・打ち上げコストも低下することから、「コンステレーション」と呼ばれる複数衛星を使った超小型衛星網の構築が世界で始まっています。このような超小型衛星を新たな宇宙利用ビジネスへの展開を試みる企業が国内外で生まれており、ニュースペースと呼ばれています。

しかしながら、ニュースペースが急速に拡大する中で、高品質な人工衛星の設計・製造・運用を現場で支える技術者が不足しています。国内の大学・高等専門学校においても技術者教育の一貫として超小型衛星が使われてきましたが、それらの取り組みは単一の研究室による散発的な取り組みにとどまってきました。そのような状況に鑑み、この度本学では建学の精神である「世界文化に技術で貢献する」に立ち返り、宇宙産業を支える高度技術者の育成を目的とした新しい教育プログラムを開始することとなりました。

2021年度の本学3年生を第1期生とし、学部学科不問で参加可能で、衛星の設計・製造・試験・運用体験を取り入れる実践的な教育プログラムを実施します。切れ目無く衛星プロジェクトを行う事により、本学で学ぶ学生・大学院生に技術とノウハウを蓄積します。また、常に改良を加えていくことにより、ミッション(※2)成功率の高い教育目的の衛星設計を確立します。

一連の衛星は「高度技術者育成」を目的としていますが、衛星からの電波は、小学生などでも自作可能なアンテナで受信可能です。これらの超小型衛星の開発と運用を最初から最後まで現場で経験した高度技術者を宇宙産業の現場に即戦力として送りこみ、小型・超小型衛星等を活用した新たな宇宙産業の発展に貢献したいと考えています。

(※1)キューブサット
1辺10cmの立方体サイズ・1kg程度の質量からなる(1Uサイズの)超小型衛星。2003年の打ち上げを機に、世界的にも多くの大学・企業が参加し、衛星製造・運用の入口として活用されています。近年では3Uサイズの衛星単体、あるいは複数機をつかった実用的な衛星利用も始まっています。

(※2)ミッション
地球撮影や高速通信など、個々の人工衛星が実際に行おうとしている衛星の使用目標

2号機「KASHIWA」

ハイライト

※日にちは全て日本時間

2022年1月 当時の学部2年生が開発をスタート(製造に1年5か月)
2023年11月27日 JAXAへ引き渡し
2024年3月22日 アメリカ・スペースX社「ファルコン9」ロケット30号機で打ち上げ
2024年4月11日 国際宇宙ステーション(ISS)から放出
2024年6月3日 人工衛星局相当アマチュア局免許が交付。初期ミッション達成を発表

ミッション

【ミニマムサクセスレベル(最低成功条件)】

撮影した画像1枚を地球上で画像に復元すること

【独自ミッション】

  • ステレオカメラ撮影による測距技術実証
  • カメラによる地球観測
  • Automatic Packet Reporting System(APRS)※を使用した衛星経由でのデータ送受信技術の実証
  • 地磁気観測データの聴覚情報への変換実証

※APRS
Automatic Position Reporting Systemの略であり、アマチュア無線局がアマチュア無線電波上に生データをリアルタイムに配信するパケット通信プロトコルです。

命名コンセプト

庭園で若葉から力強く美しい草花が育つように、学生自身及び人工衛星が育っていくことを目標に、チーム名を「GARDENS(ガーデンズ)」としています。また、超小型衛星の各名称は学生達自らが考え、植物名から命名しています。

  1. 柏の木は山火事に耐えることでき、火災後の跡地に樹木が残っていることが多いと言われています。どんなことがあっても必ず動作する衛星を開発するという強い思いを込めました。
  2. 葉は枯れても落葉せずに残り続け、枯葉と新葉が絶える事のないまま生い茂る事から、柏は「代が途切れない」縁起の良いものとされています。衛星YOMOGIから引き継いだノウハウを次世代へとつなげる衛星でありたいという願いから命名しました。

2号機「KASHIWA」(2面)

2号機「KASHIWA」(3面)

©Takahashi Etsuko 2023(高度技術者育成プログラム2期生)、制作:栁川菜々海(デザイン科学科4年)

関連リンク

3号機「SAKURA」

ハイライト

※日にちは全て日本時間

2022年7月 当時の学部2年生が開発をスタート(製造に1年2か月)
2024年4月17日 JAXAへ引き渡し
2024年夏 打ち上げ予定

ミッション

【ミニマムサクセスレベル(最低成功条件)】

撮影した画像1枚を地球上で画像に復元すること

【独自ミッション】

  • 太陽の観測、火山・洪水・台風を対象とした地球観測
  • Automatic Packet Reporting System(APRS)※によるアマチュア無線家へのサービス

※APRS
Automatic Position Reporting Systemの略であり、アマチュア無線局がアマチュア無線電波上に生データをリアルタイムに配信するパケット通信プロトコルです。

命名コンセプト

庭園で若葉から力強く美しい草花が育つように、学生自身及び人工衛星が育っていくことを目標に、チーム名を「GARDENS(ガーデンズ)」としています。また、超小型衛星の各名称は学生達自らが考え、植物名から命名しています。

  1. 桜の材質は、反りや狂いなどが少なく、耐久性も高く、虫などの害にも強い、強靭さを特長としています。衛星SAKURAは頑丈で、且つ、花のように美しい衛星でありたいと考えました。
  2. 3号機のミッションの一つである「桜島を撮影する」※から命名しました。

※自然災害の多い日本のリスクの一つに火山噴火が挙げられます。3号機では、活火山である桜島を写真撮影により定期観測し、噴火前後の変化を比較することをミッションの一つに考えています。

3号機「SAKURA」(2面)

3号機「SAKURA」(3面)

©Takahashi Etsuko 2024(高度技術者育成プログラム2期生)、制作:末木愛理(デザイン科学科4年)

1号機「YOMOGI」

ハイライト

※日にちは全て日本時間

2021年6月 当時の学部3年生が開発をスタート(製造に2年3か月)
2024年6月5日 JAXAへ引き渡し
2024年秋 打ち上げ予定

ミッション

【ミニマムサクセスレベル(最低成功条件)】

撮影した画像1枚を地球上で画像に復元すること

【独自ミッション】

  • 東京湾の赤潮観測
  • アフリカの湖の水質調査
  • 千葉の放置林に設置した森地上局からのデータ取得
  • 御宿に設置した海地上局からのデータ取得
  • Automatic Packet Reporting System(APRS)※によるアマチュア無線家へのサービス

※APRS
Automatic Position Reporting Systemの略であり、アマチュア無線局がアマチュア無線電波上に生データをリアルタイムに配信するパケット通信プロトコルです。

命名コンセプト

庭園で若葉から力強く美しい草花が育つように、学生自身及び人工衛星が育っていくことを目標に、チーム名を「GARDENS(ガーデンズ)」としています。また、超小型衛星の各名称は学生達自らが考え、植物名から命名しています。

高度技術者育成プログラムがスタートした2021年は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行による災難や危機的状況が続いていました。「平穏」で「幸福」、「平和」な世の中になって欲しいという願いから、衛星にはこれらの花言葉を持つ蓬を命名しました。

1号機「YOMOGI」(2面)

1号機「YOMOGI」(3面)

©Takahashi Etsuko 2024(高度技術者育成プログラム2期生)、制作:栁川菜々海(デザイン科学科4年)

担当研究員:趙 孟佑 (チョウ メンウ)
千葉工業大学 惑星探査研究センター 主席研究員(非常勤)