プロジェクト

PERC超小型衛星2号機:宇宙塵探査実証衛星「ASTERISC」

概要

千葉工業大学惑星探査研究センター(PERC)は、独自の惑星科学探査を高頻度で継続的に行うことを目指し、超小型衛星プロジェクトを2012年に立ち上げました。初号機S-CUBE は2015年9月に打ち上げられ、2016年11月の軌道離脱に至るまで約1年2ヵ月に渡って千葉工大局で運用されました。

PERC超小型衛星プロジェクトの2号機となる本衛星は、独自に開発する展開膜面型の粒子観測装置を搭載し、地球周回軌道上の宇宙塵と微小スペースデブリを観測することをミッションとする3Uキューブサットです(キューブサットは10cm角のユニットからなる超小型の衛星。3Uは30cm×10cm×10cmのサイズ)。地球周回軌道で長期間に渡って宇宙塵とスペースデブリをリアルタイム観測するのは世界初の試みです。膜面型の粒子観測装置とミッションの内容が評価され、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の革新的衛星技術実証プログラム2号機に搭載される実証テーマに採択されました。2021年度にイプシロンロケットにより打ち上げられ、地球周回軌道に投入される計画です。

PERC超小型衛星2号機の名称が「ASTERISC」(アスタリスク)に決定!

ASTERISCのミッション

宇宙塵と微小スペースデブリはそれぞれ宇宙科学と宇宙環境問題の観点において重要な観測ターゲットです。

太陽系形成初期に塵が集まって微惑星が形成し、さらに微惑星が合体成長することで惑星になりました。その後、微惑星の生き残りである彗星や小惑星から再び塵が放出され惑星間空間を漂い、場合によってはその宇宙塵が別の天体に行き着くこともあります。実際に、地球に集積する宇宙物質の質量の大部分を占めるのが宇宙塵と考えられており、宇宙塵由来の有機物が生命の起源に最も効果的に寄与した可能性が提唱されています。このように、宇宙塵は太陽系内を循環し、太陽系史の様々なプロセスに関与していたと考えられています。

一方、人類活動によって増加しつつあるスペースデブリは数百ミクロンサイズであっても宇宙機に大きな被害を及ぼしうることから、微小デブリの定量的な観測および評価は今後本格的に人類が宇宙利用を進める上で喫緊の課題といえます。しかしながら、宇宙塵と微小スペースデブリはいずれも軌道上で観測するには数が少なく、その詳細な性質・分布については十分にわかっていませんでした。観測するには大きい面積の粒子観測装置が必要となりますが、従来の方式の装置を大型化することは技術・コストの観点で容易ではありませんでした。

そこでPERCでは、容易に大面積化が可能な粒子観測装置として膜面状の粒子観測装置(ダストセンサー)を新たに開発しました。この膜面型ダストセンサーは、粒子がポリイミド膜面に衝突することで発生する弾性波を膜面上に配置した圧電素子群により電気信号として検出・高速サンプリングすることで「膜面全体をダストセンサーとする技術」です。膜の面積を大きくするだけで大面積ダストセンサーを容易に実現できるため、軌道上の数が少ない宇宙塵・微小スペースデブリの観測において非常に有効となります。さらに、リアルタイムで粒子を観測できるため、粒子の分布を調べることもできます。既に宇宙実績のある圧電素子、ポリイミド膜、ケーブル、エレキにより構成されるシンプルな構成であるため、従来の粒子観測装置と比較して圧倒的な低価格で製造可能であることに加え、他用途の膜(例えばソーラーセイル、衛星用断熱材、宇宙インフレタブル構造物など)に容易にダスト検出機能を付加できるなど将来の様々な応用が期待できます。PERC超小型衛星2号機は膜面型ダストセンサーを搭載し、実際に軌道上の宇宙塵・スペースデブリ粒子の長期連続観測に挑みます。

膜型ダストセンサーの概念図

衛星バスシステム

PERC超小型衛星2号機のバスは、千葉工大/東北大で開発した初号機S-CUBEの知見・ノウハウをベースとしてさらに性能を向上し、豊富な実績を有する国内メーカーとともに開発・製造することで信頼性の高いシステムを実現します。本バスシステムのオンボードコンピュータは消費電力を抑えつつ高速処理が可能な構成とし、高速ダウンリンク通信(数Mbps)や複雑な制御・演算(高度な姿勢制御など)に対応できるものとなっています。さらに、実用性が低くなりつつあるUHF/VHF通信の代替としてキューブサット用S帯テレメトリ/コマンド通信機を開発し軌道実証します。高度な実用ミッションを行うに足る性能を持つ本バスシステムの軌道実証により、深宇宙探査を含む挑戦的な将来ミッションにつなげたいと考えています。

地上局

衛星の運用はコマンド送信・受信可能な千葉工業大学局(口径2m)と東北大学局(口径2.4m)の2局体制で実施します。千葉工大局のパラボラアンテナは高層ビル屋上(地上高100m)に設置しているため通信障害の少ない良好な衛星通信が可能です。

革新的衛星技術実証プログラム

JAXAの革新的衛星技術実証プログラムは、民間企業・大学等による超小型の人工衛星を活用した新たな知見の獲得・蓄積、将来ミッション・プロジェクトの創出、宇宙システムの基幹的部品や新規要素技術の軌道上実証実験などのための機会を提供することを目的としたプログラムであり、採択された衛星はイプシロンロケットにより2020年度内に打ち上げられ、軌道上で実証実験・観測を行う計画になります。今回採択された私達の申請テーマ名は「キューブサットによる宇宙塵・スペースデブリ観測を目指した膜型ダストセンサーおよび国産キューブサットバスシステムの軌道上実証」です。

お問い合わせ

石丸 亮 (イシマル リョウ)
千葉工業大学 惑星探査研究センター 主任研究員
PERC超小型衛星プロジェクトマネージャ
TEL/FAX: 047-478-4814 / 047-478-0372
E-Mail: ishimaru[at]perc.it-chiba.ac.jp