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小天体衝突による火星から衛星への物質輸送、 従来見積もりの10倍以上-火星衛星サンプルリターンで火星の全歴史の解明が可能-
2020.1.14
東京工業大学 地球生命研究所(以下、ELSI)の兵頭龍樹研究員(現:国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)宇宙科学研究所 国際トップヤングフェロー)と玄田英典准教授、千葉工業大学 惑星探査研究センターの黒澤耕介上席研究員、JAXA 宇宙科学研究所の臼井寛裕教授(ELSIアフィリエイトサイエンティスト)と藤田和央教授は共同で、火星衛星の表土に含まれる火星由来の物質の量と質に関する理論研究を実施しました。火星本体で実際に過去に起こった複数回の隕石衝突について数値計算を実施したところ、火星衛星フォボスには、火星表層物質が従来の見積もりの10〜100倍程度降り積もっていることがわかりました。さらにその表土には、火星の全領域かつ全時代からの物質が混入していることが明らかになりました。この研究成果により、JAXAが計画している火星衛星探査計画で採取される火星衛星サンプルは、全火星史解読の鍵という、質の面での新たな科学的価値を持つことになります。
研究成果は、2019年12月27日付けのネイチャー・リサーチ社の査読付き国際学術誌「Scientific Reports」電子版に掲載されました。
ポイント
- 火星上で起きた小天体の衝突によって、火星表層物質が吹き飛ばされ、その一部が火星衛星フォボスに降り積もっている。
- 最新の数値計算によって、フォボスには従来の見積もりの10〜100倍の火星表層物質が混入していることが明らかになった。
- 日本が進める火星衛星サンプルリターン計画では、火星の全歴史が解読可能なサンプルを、欧米による火星本体の探査に先行して手に入れられる可能性がある。
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