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ASTERISC打ち上げと初期運用について

ブログでの報告が遅くなりましたが、ASTERISCの打ち上げから初期運用に至るまでを振り返りたいと思います。

2021年11月9日9時55分にイプシロンロケット5号機によってPERC衛星2号機ASTERISCが打ち上げられました。3度の延期を経てようやく打ち上がったので、ああ本当に今回は上がるんだなあ…という妙に落ち着いた気持ちで打ち上げを見届けました(図1)。

第一可視パス(地上局の上を初めて衛星が通過し通信できる機会。同日20時34分頃)の前は準備で慌ただしいのが普通ですが、打ち上げが延びた分リハーサルを何度も実施して万全の状態で衛星を待ち構えていました。その甲斐もあり、第一可視パスで衛星の電波を受信し、データのデコード(電波に載せられたデータを復元すること)に成功しました。送信したコマンドを衛星が受け取ったことも確認できました。

第一可視ではロケット側から提供された軌道情報を用いて運用しましたが、次の日からはNORAD(North American Aerospace Defense Command)から公開されたTLE(NORADが地上のレーダーで軌道上の物体の位置や速度を計測して公開する軌道情報。Two-line elementsの略)を用いて追尾することとしました。今回は9機の衛星が同じロケットで打ち上げられたので、イプシロンロケットの上段ステージを含む11個のオブジェクト(オブジェクトA~K)のTLEからASTERISCを特定する必要がありました(図2)。当初は分離順を考えオブジェクトCがASTERISCと当たりをつけ運用していましたが、日に日に受信できる頻度が落ちていき数日後の可視パスでは全く受信できず最悪の事態も一瞬頭をよぎりましたが…改めてC以外のオブジェクトをいくつか追尾することでオブジェクトAが正解だったことがわかりました。オブジェクトAから強い電波を受信できた時にほっと胸を撫で下ろしたことを覚えています。打ち上げから3日後の11月12日には安定した通信を確立できました。

 ここまでの1カ月に渡るクリティカル運用と初期運用によって、全ての搭載機器を起動させることに成功し(プレスリリース:http://www.perc.it-chiba.ac.jp/news/7375)、初期運用の終了までもう少しというところまで順調に来ています。いよいよ膜型ダストセンサを展開し、観測運用に移行できそうです。面白い成果を出せるように頑張りますのでどうぞご期待ください。

石丸 亮

図1. 打ち上げを大学職員の方々と見ていました。

図2. 打ち上げの次の日に公開されたTLE軌道。A~Kの11個のオブジェクトが連なっています。この時点ではオブジェクトCをASTERISCだと考えていました。