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ASTERISCダストセンサーフライトモデル較正試験

6月14日から20日に、大阪大学佐々木研の静電加速器を用いてPERC超小型衛星2号機ASTERISCに搭載するセンサーの較正試験をしてきました。

ASTERISC(図1)は、PERC独自に新規開発した膜面型のダストセンサーの技術を活かした「畳める大面積センサー」を使って、軌道上の数密度が小さく定量的な観測が十分でなかった宇宙塵と人工物体である微小スペースデブリ(宇宙ゴミ)の観測に挑みます。 宇宙塵は太陽系の歴史に様々な形で関与してきたことから惑星科学の重要な研究対象とされていますし、宇宙ゴミの定量的な観測および評価は今後本格的に人類が宇宙利用を進める上で喫緊の課題といえます。衛星本体より大きい面積(~0.1m2)のダストセンサー(粒子検出器; 図2)を折り畳んだ状態で搭載し、地球周回軌道に打ち上げられた後に軌道上でダストセンサーを広げ、軌道上の宇宙塵とスペースデブリを観測することを計画しています。

図1 千葉工大衛星2号機ASTERISC

図2 膜面型ダストセンサー

新しく開発した機器を宇宙で使う前には(打ち上げ後に修理や改造することができない宇宙機器の特殊性のため)、所定の動作をするのかをあらかじめ地上で実験しておく必要があります。そのような試験の一環として今回は、宇宙空間の粒子を模した、既知の速度・サイズの粒子をダストセンサーのフライトモデルに衝突させて、実際にその粒子を検出できるのかを調べてきました(このような試験を一般的に較正試験と呼びます)。

宇宙塵などの高速で宇宙空間を飛翔する粒子を模擬するために、高電圧(数十キロボルト)で粒子を加速する静電加速器(図3)を使いました。大面積のセンサーをスペースの限られる静電加速器の真空チェンバーにどうやって入れて、さらにどうやってセンサー上に万遍なく粒子を衝突させるかが課題でしたが、センサーを折り畳めることを活かし、図のように円筒型に畳んで固定し、中心の棒を回転・上下させられる治具(図4)を作ることで、センサー上のあらゆる場所に粒子を衝突させ較正試験を行うことができました。試験からは、実際に粒子を検出でき(図5)、フライトモデルのセンサーがきちんと機能することがわかりました。

図3 静電加速器

図4 特注の治具

図5 ダストの検出波形

これから本格的に衛星の最終組み立てが始まり、いよいよ衛星引き渡しと打ち上げも近くなってきました。今後も折に触れASTERISCの開発について報告しますのでご期待ください。 

(石丸 亮)

PS. センサーを固定し回転・上下させる治具(図5)は、本学の工作センターに依頼しましたが、いろいろ難しい仕様を出したにもかかわらず、要求以上の素晴らしい治具を作っていただきました。ありがとうございました。

宇宙塵とスペースデブリの観測の重要性やセンサの詳細、プロジェクトの詳細については以下のASTERISCプロジェクトページをご覧ください。