電子線試験実施!
2017.5.7
ヨーロッパの木星氷衛星探査ミッションJUICE(ジュース)のガニメデレーザー高度計GALA(Ganymede Laser Altimeter)の開発チームに参加しています。
GALAは、送信したレーザーパルスが氷衛星であるガニメデ表面で反射して戻ってくる信号を、アバランシェフォトダイオード(以降、APD)という光センサをつかって検出し、天体表面の高低差や傾斜角を調べます。氷衛星がある木星圏内は強い磁場があって、通常の惑星間とは違う放射線環境になっています。このPERCブログでもご報告いたしましたが、昨年4月フランスでAPDの耐放射線性能を確かめるための試験を行いました。
APDは光センサなのですが、放射線が当たると信号を出すときがあります。この信号が本来測定したいガニメデからの反射光の信号の検出を邪魔することが予想されています。そこで、JUICEが木星軌道上にあるときにAPDに飛び込むと予想される電子線をAPDに照射する試験を行って、どのような信号が出力されるか確かめる試験を行いました。下の写真は、電子線照射試験を行ったときに使った京都大学の加速器施設の制御室の様子です。
GALAに搭載して打ち上げるAPDモジュールは、元々カタログに載っている一般に売られているものをGALA用にカスタマイズ設計したものです。搭載品は現在開発製造中なので、この試験には一般品を使用しました。 下の写真は、APDモジュールに照射した試験セットアップの様子です。
使用した施設は、線形加速器という種類の電子加速器で、本来は加速した電子線を標的物質に照射してそこから発生する中性子を使った実験をする施設ですが、その電子線をAPDモジュールに照射しました。電子線のエネルギーを変えたり、APDモジュールへの照射方向を変えたりして試験データを取得しました。幸いなことに、ガニメデからの反射光の信号に強く干渉するような信号は出ないという試験結果でした。
今回の試験は一般品を使ったものですが、今後、搭載品が出来上がってきたらそれを使って同様の試験を行う予定です。今後も色々な開発試験を行う予定ですので、状況報告などをこのブログでお知らせしようと思います。応援よろしくお願いいたします。
(小林正規)
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