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IOTA/EA(国際掩蔽観測者協会東アジア)の活動が2年目に入ります
小惑星はときどき遠くの星の手前を横切ります。このとき、星は一瞬だけ小惑星に隠されて見えなくなります。この現象を「掩蔽(えんぺい)」と呼びます。小惑星による掩蔽を正確な時刻の記録とともに観測すること、すなわち「掩蔽観測」は、小惑星の形や大きさを知るための強力な手法です。これまでも、惑星探査研究センターが開発・運用に関わるはやぶさ2#やDESTINY+ミッションのフライバイ対象天体の形や大きさを前もって調べ、探査機による観測計画に役立てるために、「掩蔽観測」がたびたび活用されてきました(文末過去記事1-3)。
この掩蔽観測を、日本のみならず東アジア全体で協力して進めるために、国際グループIOTA/EA(国際掩蔽観測者協会東アジア)が結成されました。
掩蔽観測では、小惑星が地球上に落とす影の真下に多数の観測者を配置する必要があります。影は小惑星の移動とともに動き、その軌跡は様々な国や地域をまたいで、地球上を横切る帯状に伸びていきます。例えば、2023年の小惑星Phaethon (フェートン、ファエトン)による掩蔽観測においては、小惑星の影が日本・韓国にまたがって移動したため、両国の観測者による連携が小惑星の形を決める重要な結果に繋がりました(図1)。このように掩蔽観測は一つの国には収まりません。近隣地域と連携して観測することが重要なのです。
そこで、昨年2023年8月に、日本の掩蔽観測を主導してきたアマチュア観測家と惑星科学・天文学研究者が共同でIOTA/EAを立ち上げました(動画1)。IOTA/EAではこれまで国や地域ごとにばらばらに行っていた掩蔽現象の予報や観測報告のとりまとめを、東アジア全体で一括して発信・収集する活動をはじめています。また、国や地域をまたぐ掩蔽観測の呼びかけも行っています。この1年間で、すにで3つの掩蔽現象で国や地域を超えた観測協力が実行されました。また2024年11月に日本中部で予報されているPhaethonによる掩蔽現象についても、観測の呼びかけを準備中です。
IOTA/EAの運用には、日本からのほかに中国本土・台湾・香港それぞれの国・地域からの地域代表を含む役員11名が参加しています。惑星探査研究センターからは、共同代表として吉田二美(産業医科大、千葉工大惑星探査研究センター併任)、および、役員として秋田谷洋(千葉工大天文学研究センター、惑星探査研究センター併任)が参加し運営に貢献しています。
IOTA/EAの活動はこの8月から2年目に入ります。8/25に2年目の活動を議論するための総会がオンラインで開催されます。また、新規会員も募集しております。掩蔽観測に興味をお持ちの方は、ぜひこの機会に入会をご検討ください。
IOTA/EAの立ち上げについては、日本語の紹介記事も出版されました(日本天文学会天文月報2024年7月号「東アジアにおける新しい掩蔽観測グループの結成(IOTA/EA)吉田二美・早水勉」; pdf)。こちらも合わせて参照ください。