概要
小惑星探査機「はやぶさ2」は初代「はやぶさ」の後継機であり、小惑星サンプルリターン計画です。
「はやぶさ」のターゲットはありふれた岩石質のS型小惑星である「イトカワ」でしたが、「はやぶさ2」のターゲットは有機物や含水鉱物の存在が予想され、より始原的であると考えられているC型小惑星「リュウグウ」です。「はやぶさ2」は「リュウグウ」に到着後一年半、リモートセンシング観測・着陸機の放出・試料採集・衝突装置による人工クレーター形成など様々な課題に取り組んできました。そうして得られた科学成果と採集した小惑星のかけらを地球に持ち帰る予定です。モットーは「小惑星からの惑星科学」。「リュウグウ」という一個の小惑星の起源と進化を明らかにすることのみならず、そこから太陽系そして生命の起源と進化にまで迫ろうとしています。
「はやぶさ2」はただの小惑星探査機ではありません。「我々はどこから来たのか?我々は何者か?我々はどこに行くのか?」という人類の根源的な問いに答えようという壮大なミッションなのです。
PERCの取り組み
PERCのメンバーは「はやぶさ2」のほぼ全ての搭載観測機器の開発と検討に参画しています。
和田浩二主席研究員は2019年4月「世界初の人工クレーター形成」に成功した衝突装置の開発とそのサイエンス検討を担当しました。衝突装置によって人工クレーターを形成することには、より始原的で太陽系初期の情報を保持していると考えられる物質が存在する小惑星の内部を覗く「窓」をつくるという意味があります。さらに、本物の小惑星標的で衝突実験を行うという、天体衝突の科学を推進するうえでも大変貴重な機会となりました。ただし、「はやぶさ2」は衝突装置の破片を避けるべく小惑星の背後に避難するため、衝突の瞬間は残念ながら「はやぶさ2」本体から観測することができません。そこで「その瞬間」を観測するために小型のカメラを分離し、衝突によって生じる放出物の様子やクレーター形成過程を撮像する計画を立て、見事成功しました。その分離カメラの開発に石橋高上席研究員が大きく貢献しました。また、レーザー高度計の開発と科学応用検討を竝木則行前副所長(2014年4月から国立天文台教授)が主任科学研究者として牽引し、それを用いた小惑星周囲の塵の検出という他に類を見ないユニークなサイエンスの検討を千秋博紀主席研究員が主導しています。その他にも、小惑星の観測に必要不可欠な光学航法カメラの開発と観測の検討に山田学上席研究員が大きな役割を果たしています。
小惑星到着そして地球への帰還までの6年間、さらにその後も、得られた科学成果を最大限に引き出すべく、PERCは「はやぶさ2」とともに歩んでいます。
動画
ギャラリー
担当研究員:和田 浩二 (ワダ コウジ)
千葉工業大学 惑星探査研究センター 副所長(主席研究員)