PERCブログBlog

メテオ再打上げを振り返りつつ、再々打上げに向けて。

2015年6月28日に米国フロリダ州ケープカナベラル空軍基地から打ち上げられたファルコン9ロケットは、残念ながら打上げ約2分後に爆発し、ドラゴン補給船は国際宇宙ステーション(ISS)に届けられませんでした。ISSの米国実験棟の窓越しに2年間流星観測を予定していたメテオプロジェクトですが、残念ながら、またも計画中断となってしまいました。
昨年10月28日、メテオカメラを搭載したアンタレスロケットは、打上げ数秒後に爆発してしまいました。射点から約3kmはなれた屋外の打上げ観望地点で見守っていた我々は、バスに飛び乗り緊急退避するという衝撃的な経験をしました。今回我々は、ケネディスペースセンター(KSC)内のOperation Support Buildingの5階のテラスから、今度こそメテオが無事打ち上がることを祈りながら、ファルコン9ロケットの打上げを見守っていました。
打上げ1時間20分前から、テラスに隣接する会見場で打上げ前ブリーフィングが始まりました。元宇宙飛行士でKSCセンターディレクターであるロバート・カバナ氏より、「ファルコン9ロケットは成功が続く信頼できるロケット。安心して打上げを見守ってほしい。カメラのファインダ越しでなく、肉眼で打上げの感動を直に感じてほしい。」とスピーチがありました。カバナ氏が、最前列に座るアポロ11号宇宙飛行士のバズ・オルドリン氏を紹介すると会場から拍手が沸き起こりました。長年アポロの月試料を分析してきた自分も大興奮で、思わず写真を撮ってしまいました。星条旗デザインのシャツにデニムの出で立ちは、往年のロックスターのようなオーラを放っていました。続いて、Space-X, Commercial resupply service (CRS)#7の運用責任者から、今回の打ち上げの概要について説明がありました。

ブリーフィング後、アポロ11号宇宙飛行士のバズ・オルドリン氏(左)と談笑するKSCセンターディレクターのロバート・カバナ氏(右)

ファルコン9ロケット打上げの概要を説明するSpace-X, CRS#7の運用担当者

ブリーフィングが終わると、KSC職員から教えてもらった撮影ベストスポットに行き、三脚を配置。屋外は湿気が高く、気温摂氏30度を優に超える猛暑で、冷房で冷え切った屋内から持ち出したカメラが結露してびっくり。カメラの視野にロケットがばっちり入るようセッティングします。観望地点からファルコン9ロケットの射点までは約4km。高倍率でロケットをうまく視野に入れるのに苦労しました。我々の居るOSBのすぐ隣りには、スペースシャトルの組み立てに使われていたVehicle Assembly Building (VAB)が存在感を放っていました。

撮影準備OK!

Vehicle Assembly Buildingがすぐ隣り♪

今回は打上げカウントダウンのアナウンスは無く、テラスの隣接する会見場からNASA職員が定期的に大声を張り上げ、打上げまでの時刻を教えてくれました。打上げ1分前を切ると、テラスで見守るみんなで一緒にカウントダウン。10:21きっかりに轟音と共にファルコン9はまっすぐ順調に上がっていきました。今回は倍率を下げたカメラの視野から外れたロケットを追うことなく、カバナ所長の言葉通り、喜びの拍手と歓声を上げながら、肉眼で高く打ち上がるロケットを見上げていました。

順調に打ち上がって行くように見えた ファルコン9ロケット。

打上げ2分後くらいに、バーンという音と共にドーナツ状の白い煙が上がりましたが、その後も太陽の方向に向かい上昇を続けていたので、その音がまさか爆発とは思いませんでした(第1段エンジンの切り離しかと思った)。その後間もなく肉眼で見えなくなったので、カメラと三脚を片付けようとしていたところ、会見場のNASA職員から「何か不具合が起こったようだ。事態の把握をしているので待って欲しい。」とのアナウンス。急いで会見場に入ると、慌しく情報収集をしているNASA担当者の様子を不安そうに見つめる人でごったがえしていました。しばらくして、「事故の詳細はまだわかりませんが、残念ながら今回の打上げは失敗しました。宇宙開発にはリスクがつきものであることを改めて認識すると共に、これを乗り越え我々は前に進んでいかなければなりません。」という短い発表があり、その場は解散となりました。これまで一緒に開発を進めてきたSouthwest Research Institute (SwRI)の担当者も同席していて、メテオを搭載したロケットが二回続けて打ち上げ失敗という信じられない事実に、お互い顔を見合わせ、しばし呆然としていました。
その後、我々も足早に会見場を離れ、バスに乗り込みKSCを後にしました。バスの中では、NASA関係者が事故原因の可能性や今回の事故の影響などについて話をしていました。私とSwRIの担当者は気持ちを切り替え、メテオの再々打上げの準備作業について相談を始め、バスを降りるまでには今後の作業内容やスケジュールを決め、帰国後の電話会議の日にちを確認して別れました。
帰国後、早速NASA、SwRIとメールや電話で打合せを行い、再々打上げに向けて動き出しています。今回の打上げ失敗後にも、たくさんの方から励ましや応援のメッセージを頂き、大変心強く、また有難く思っております。関係者一同、気持ちを強く持って、メテオの再々打上げに向けて進んでいきます。
引き続き応援よろしくお願いいたします!
(荒井朋子)