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第54回月惑星科学会議に参加してきました.

高速度衝突プロジェクト担当の黒澤です. 2023年3月12日から3月19日に米国テキサス州で開催された第54回月惑星科学会議(Lunar and Planetary Science Conference)に参加してきました. 2019年以来, 4年ぶりの現地参加でした(2020年は中止, 2021, 2022年はオンライン参加).

コロナ禍に入って以来, 初の海外出張ということで色々な勝手を思い出すのに苦労しました. パスポートの更新やESTAの申請は忘れずに順調に進んだものの, 発表に使用するポスタを印刷するための大判プリンタが起動してくれない, 自宅にイヤフォンを忘れるなどの事件を乗り越えて出国しました.

久々の米国入国審査に緊張しながら望んだのに, 審査官に日本語で話かけられて拍子抜けしましたが無事に入国できました. たまたま共同研究者が同じ便にのっていてレンタカーを借りているとのことだったので, ありがたく同乗させていただき宿泊ホテルにたどり着きました. ホテルフロントで無事にカードキーを頂き, 学会に参加する準備ができました. このとき日本時間では午前3時ということで眠気に襲われていましたが, そのまま眠ると時差ボケが治らないので眠い目をこすりながら, 会場のホテルで開催されているWelcome receptionに向かいました

図2. 会場ホテル入口.

図3. 会場ホテル入り口に設置されている学会気分を盛り上げてくれるポスタ.

Receptionでは久々にお会いできた研究者の皆様に挨拶しつつ, 今回の発表のポスタのA4版をお渡ししてぜひ聴きに来てください, と宣伝して回りました. その様子を見ていた現在米国在住の共同研究者(日本のお方)から日本人っぽいなぁ…と評していただきました.

月曜日から木曜日は午前8時20分から午後5時までみっちりと講演が行われました. 興味ある議題の会場(全部で5会場)で講演を拝聴し, 関連研究分野の情報収集を行いました. 4年ぶりの現地参加でしたが, やはり対面学会はいいなぁ…としみじみ感じました. 講演の内容だけでなく, 講演者の身振り手振りとか, 話口調の強弱, 聴衆の反応なども含めて立体的な体験として頭に残ると思いました. 黒澤は主著2件, 共著3件のポスタ発表を行いました. もともとは口頭1件, ポスタ1件で申し込んだのですが, 今回は口頭発表には採択してもらえませんでした…

図4. 黒澤の発表資料. ポスタ発表を2件行った. 2人用のポスタボードを独占して発表することができた.

LPSCでは昼食の時間が約2時間半と長めに取られています. この時間に昼食を取りつつ議論を行うというのも対面参加の醍醐味です. 今回は高速度衝突プロジェクトの直近の成果である炭酸塩岩の衝撃回収実験玄武岩の衝撃回収実験に興味を持ってくれ, 最近メールでやり取りをしていたカナダとイギリスの研究者と本格的に共同研究を行っていく建設的な相談をすることができました.

図5. 共同研究者の方が購入したお昼ごはん. 量が多い…!

図6. 自分が購入したお昼ごはん. ほどよい量のメニューを選択.

学会初日のセッション後にはPlanetary Impact Community Wiki projectの会合に参加しました. これはUC DavisのSarah Stewartさんが取りまとめている惑星科学における衝突現象を研究しやすくしていこう, という活動です. 具体的には研究成果の公開についての意識合わせ, 各研究者の特殊技術についての情報交換などの活動を行っています. 20–30人ほどの研究者が集まり交流を持つことができました.

図7. Planetary Impact Community Wikiの会合後の夕食で頂いたメキシコ料理. 意外と塩味は抑えめ. クリームチーズ&トマトの酸味と青唐辛子の辛味が牛肉の旨味と合わさり美味しい.

金曜日は午前中で講演が終了だったので, 午後は今回のポスタ発表の共著者(イギリスのお方)と今後の研究計画について議論しました. あとイギリスのコロナ禍の状況とか, オンライン学会はつらい, とかの世間話もできました. 論文にまとめていく方向性の意識合わせができて大変有意義でした.

議論が15時ころに終了し今回の学会の予定はすべて消化できました. すっかり安心して気が抜けてしまったのですが, 時差ボケの治りきっていない体でホテルのソファに腰掛けたりすると寝てしまう恐れがあったので, お散歩がてらお土産を探しに出かけることにしました.

図8. 絶好のお散歩日和だった.

会場ホテル周りに1件だけあるショッピングモールにいってみたものの, 例年の頼みの綱であった唯一のテキサスお土産屋さんがなくなってしまっており, 途方にくれました…

図9. ショッピングモールのフードコートに併設されたメリーゴーランド. 結構実物寄りの造形.

仕方ないのでお土産は空港で買うことにして, お散歩を続けることにしました. やはり現地のスーパーマーケットに行ってみなくては…ということでH.E.Bに行ってみました. 日本ではあまり見かけない食材や価格の違いがあって大変楽しめました.

図10. H.E.Bで見かけたリーキ(西洋ネギ). 日本ではほとんど見かけないが山程売っててしかも安価. 買ってホテルで調理しようかと迷ったが, グッと我慢した. なお写りこんでいる指は定規代わりの黒澤の指である. (以下の図でも同様. なお当然のことながら商品には触れていません.)

図11. ばかでっかいにんにく.

図12. アメリカ映画の家庭団欒場面でよく出てくる丸鶏. お肉は全体的に日本で買うより安価.

図13. ばかでっかいマヨ. 使用する油の違いで数種類のマヨがあるらしく, 食習慣の差異を感じた.

図14. 商品パッケージに人の顔の写真を使うのも日本ではあまりないかも?

図15. 牛出汁, 鳥出汁, 野菜出汁. 日本では顆粒タイプがほとんどだと思うが, 液体状で販売していた.

図16. 高価だが, 卵は入手可能. 帰国して卵が手に入らないことに絶望中…

図17. 1ガロン(~4 L)入り牛乳. 日米の1世帯の平均家族構成の差異を感じた.

図18. 2019年に来たときはなかったように思うが, 日本酒も手に入るようになっていた.

図19. ワインコーナー. 転倒防止用の冊が無いのが印象的. 地震がほとんどないのだなぁ…と感心した.

図20. マジックアワー.

この地域の中心に位置する公園では子供たちが遊んでいる前で路上ライブが行われていました. 近所のお店で定期的に開催される音楽教室の生徒さんたちの素晴らしい演奏が流れており, 楽しめました. が…選曲がやけに渋くて「Careless whisper」(美しいハモリ付き)などが演奏されていました.

H.E.Bとライブにだいぶ満足したので, 仕上げに米国出張最後の晩餐をいただくべく, 近所にあったTrue food kitchenに立ち寄りました.

図21. Grass-fed beef burgerとケールのサラダ. アメリカといえばハンバーガー, ということで注文. 牛肉パテに飴色玉ねぎとマッシュルームのペーストが合わされており, 旨味の相乗効果でとんでもなく美味しかった. ケールのサラダのドレッシングは酸味が強めに調整されており, 全く飽きることなくぺろりと頂いた.

ホテルから帰りの空港までの間にあれこれ事件があったのですが, ここでは省きます. ジョージ・ブッシュ空港でお土産を目当てに免税店に立ち寄ったところ, 珍しいお酒が並んでいたので, お土産を購入できました(アメリカ土産ではないのですが, ここでは不問とします.).

図22. なかなかの品揃え.

飛行機に乗ること14時間, 無事に成田空港に到着しました. 機内では昨年のGlastonbury festivalのライブを短くまとめた番組が放映されていて楽しめました.

図23. 成田空港到着口.

そろそろ今回の海外出張記をまとめていきたいと思います. 4年ぶりということもあり, 心理的な補正もありそうですが, やはり学会は対面がよいなぁ…と強く感じました. 対話している相手の立ち振舞いとか, 微妙な表情の変化でその議論が良い方向に向かっているのか, そうではないのかがよく分かるのは重要だ, と思います. 海外勢の体格のよさから自分が小人になったかのように感じたり, 英語が通じなくて聞き返されたりして悔しい思いをするのも懐かしく思いました. 噂によれば来年度は会場が別の場所に移動するそうです. もしかするとThe Woodlandsに行くのはこれが最後かもしれませんが, 来年度も研究成果を発表して, 世界の研究者と議論できるように頑張りたいと思います.

黒澤