研究員ブログ

クリーンな固体推進薬を用いた小型ロケット打上実験の舞台裏

みなさんこんにちは.

PERCロケット担当の和田豊です.

今回は新しい固体燃料ロケットの打ち上げ実験を行いました.

大学からもプレスリリースが出ています.以下のURLからどうぞ!

https://www.it-chiba.ac.jp/topics/pr20210511/

++++++プレスリリース分抜粋(ここから)

2021年3月25日、千葉県千葉市にある千葉工業大学千種グラウンドにおいて新小型固体ロケット2機の打上実験を実施しました。この新小型ロケットには、千葉工業大学、日油株式会社、宇宙航空研究開発機構(JAXA)らが共同研究にて新たに開発した宇宙を汚さないクリーンなロケット推進薬を搭載しています。2回の打上実験が実施され、いずれも打ち上げに成功し予定通りの高度へ到達したことが確認されました。これにより、新しいロケット燃料の有用性が確認され、今後、クリーンな推進装置として人工衛星や惑星探査機などの宇宙機への搭載や宇宙ゴミを発生しないため他の惑星を汚染しない推進系としての利用が期待されます。

++++++(ここまで)

ということで,今回は新しい固体推進薬を使った小型ロケットの打ち上げ実験に成功したというニュースですが,実験に至るまでは色々な苦労がありました.今回はその苦労(失敗)の一面をご紹介します.

今回,開発した固体ロケットの推進薬にはGlycidyl azide polymer (GAP)という高エネルギー物質と呼ばれている高分子材料を使っています.このGAPを燃料兼結合剤として酸化剤には一般的な推進薬に用いられている過塩素酸アンモニウム(AP)を使いました.

硬化させた Glycidyl azide polymer (GAP)

GAPという物質は非常に面白く,一見すると普通のゴム材料のようですが,ある一定の圧力と温度を加えると連鎖的な自己発熱分解を生じて燃料過多なガスを生成します.

その特性を生かした研究として,以前も我々は新しいガスハイブリッドロケットの打ち上げ実験にも成功しています.

(その時のブログはこちらhttp://www.perc.it-chiba.ac.jp/blogs/6842

(プレスリリースはこちらhttps://www.it-chiba.ac.jp/topics/pr20200401rocket

通常の固体推進薬には性能向上と燃焼振動低減を目的にアルミニウム粉が金属燃料として用いられています.しかし,このアルミニウムが酸化アルミニウムや未燃焼のアルミニウムとしてノズルから排出されてしまい,宇宙環境を汚してしまうため,アルミニウムを抜いた固体推進薬の需要が高まっています.

そこで,GAPの高エネルギーでありかつ高密度であることを活かし,アルミニウムを混ぜなくても良い性能を発揮する固体推進薬の開発を目指しています.

まず我々はGAP/AP推進薬がどのくらいの圧力下で,どのくらいのスピードで燃えるのか,といった基礎的な研究を行いました.そのデータをもとに,ロケットモータを設計し燃焼実験を行いました.

ところが,何度やっても不点火を繰り返します.うまく火がつきません.試行錯誤の結果,点火時の燃焼器内の形状に問題があることがわかりました.

そして装置を改良,いよいよ無事に点火できるようになったと思ったら次の壁が立ちはだかります.こちらの動画をご覧ください.

GAP/AP推進薬による固体ロケットモータ燃焼実験(失敗)

そう爆発です.点火した瞬間に爆発することもあれば,動画のように点火してしばらくしてから爆発するなど様々です.たまにうまく行くこともありますが,それではロケットの打ち上げが出来ません.

毎回毎回,火をつけては爆発を繰り返す中で,うまく行くときだけに共通した特徴を見つけました.細長い紙管の中に燃料を充填し,必要な長さに切りだして使っているのですが,どうやらその切り出した場所によって爆発したり,成功したりするようです.なぜ,そうなるのか.これを考えているときが研究としてはとても楽しく,そしてついに理由がわかりました.最高に気持ちのいい瞬間でした.

対策を講じてからはじゃじゃ馬だったGAP/AP系推進薬が急におとなしくなり,いうことを聞いて燃焼してくれるようになりました.

その成果をもって小型ロケットの打ち上げに挑戦,2回の打ち上げ成功に至りました.こちらが打ち上げ時の動画です.


GAP/AP推進薬を搭載したロケットの打ち上げ実験

まさに育て上げた推進薬が仕事を果たした瞬間です.開発に携わった学生たちも大喜びでした.

この推進薬は今後宇宙空間での利用を目指してさらに詳細なデータの取得を行っていく予定です.宇宙で使われる日が来ることを信じて研究を進めていきたいと思います.