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空中発射ロケット

こんにちは。空中発射ロケット担当の庄山です。

空中発射ロケットとは、文字通り、空中で点火し発射するロケットです。ロケットを積んだ飛行機から水平発射するタイプ(PegasusやVirgin orbit)が主流ですが、私達は気球からの空中発射を目指しています。

発射方式航空機水平発射航空機+落下傘気球
発射高度12~15 km7~10 km20~30 km
ロケット
質量
1~10 ton10~50 ton0.1~1 ton

気球は小型ロケットしか持ち上げられませんが、飛行機よりも圧倒的に安いことと、より高くまで上げられるメリットがあります。飛行機は頑張っても地面から15kmの高度が限界ですが、気球なら20km以上まで到達できます。高い高度では空気が薄いので、ロケット飛行時の空気抵抗が1/10以下になりますし、ロケットエンジンのノズルを大きくすることで、燃焼ガスの噴射速度が格段に上がります。地上から発射すると高度30kmまで飛ぶロケットを、高度20kmから空中発射すると、到達高度は50kmでしょうか?いえ、何と100km以上まで伸びます。「空と宇宙の境目」ともいわれる高度100km付近にもごく僅かに大気があり、宇宙から地球に飛来してきて間もない微粒子が浮遊しています。これらの採集実験がこのロケットの最初の目的です。将来的には人工衛星の軌道投入も狙っています。

しかし、高いところでは気温が下がります。高度20kmにもなると、気温は-50℃まで下がります。このような場所を気球で長い時間漂っていると、ロケットの燃料も冷えてしまいます。すると燃料の飽和蒸気圧も下がってしまい、燃焼室の圧力が上がりません。そこで燃料を加圧供給するために、小型のポンプを開発しています。

酸化剤の電動ターボポンプ(全長25㎝程度)

スペースシャトルやH-IIAのエンジンに搭載されているターボポンプは、燃焼ガスで駆動するため構造が非常に複雑ですが、これは電動モータで回すので非常にシンプルで小型です。1秒に1000回転という高速で回転します。電動ターボポンプを使った最初のロケットは、RocketlabのElectronというロケットで、燃料と酸化剤を加圧する2つのポンプを使っています。固体燃料と液体酸化剤を用いるハイブリッドロケットの場合は1つのポンプで済み、世界初の試みです。

もう一つの課題が、ランチャ(発射装置)です。気球に吊り下げられたランチャは、何もしないと回転してしまい、姿勢が安定しません。これでは発射後にロケットがどこに飛んでいくか分かりません。実はこれまで気球からロケット発射した例はいくつかありますが、いずれも姿勢制御装置が付いていないのです。PERCでは、山口県の企業さん達と共同で姿勢制御装置付き空中発射用ランチャを開発しています。昨年は、気球の代わりにクレーンで吊ったランチャからモデルロケットを発射し、狙った方向に落下させることに成功しました。(プレスリリース)。今後は、実際に気球を使った発射実験を計画中です。