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小惑星22106Tomokoarai誕生

2014年6月30日から7月4日までフィンランド・ヘルシンキで開催された国際会議「Asteroid, Comets, and Meteors (ACM) 2014」(注1)において、荒井朋子上席研究員の名前が小惑星に命名されました(注2)。ACMとは、小惑星・彗星・流星などの太陽系小天体に関する世界最大規模の国際会議で、1983年以来、約3年ごとに開催され、今回で12回目となります。この会議では、当該分野に貢献のあった研究者などの名前を小惑星に命名することが恒例になっていています。今回新たに命名された小惑星180個のうち、荒井上席研究員を含め6名の日本人が命名されました(注3)。小惑星は発見時にまず仮符号がつけられ、その後、発見者あるいは発見に関わった小惑星観測プロジェクトの実施担当者が命名を提案し、国際天文学連合(IAU)が正式に命名を承認します。この度の命名は、同氏のこれまでの隕石研究の業績および千葉工業大学での国際宇宙ステーション搭載流星カメラ開発プロジェクトが評価されたものです。

小惑星22106Tomokoaraiは、2000年7月に米国アリゾナ州フラグスタッフにあるLowell天文台のLowell Observatory Near-Earth Object Search(LONEOS)プロジェクト(注4)により発見され、2000 NC12という仮名称が付けられましたが、それ以前にも多数の観測記録があり、最古の観測は米国カリフォルニア州サンディエゴにあるパロマー天文台での1953年7月の観測に遡ります(注2)。この小惑星は、火星と木星の軌道の間に位置する小惑星帯軌道を回っています。軌道傾斜角(小惑星の軌道面と黄道面(太陽系の主な惑星や小惑星の軌道面)が成す角度)が約24度と大きいため、軌道傾斜角が大きく楕円軌道を持つ彗星と小惑星の中間的な天体の可能性があります(注5)。
彗星と小惑星の中間的天体は小惑星帯だけでなく、地球近傍小惑星(地球に接近する軌道を持つ小惑星)にも存在し、例としてふたご座流星群の母天体である小惑星3200 Phaethonがあります。彗星と小惑星の中間的天体は、氷や有機物を含む始原的な(太陽系形成初期の情報を残す)天体である彗星が、太陽系の歴史の中でどのように小惑星に進化するのか、また彗星に含まれる水や有機物が地球の生命の起源にどのような影響を及ぼすかを理解する手掛かりであるため、科学的に非常に重要な研究対象です。従って、現在我々は小型科学衛星ミッションとして提案されているDESTINY(Demonstration and Experiment of. Space Technology for INterplanetary voYage、深宇宙探査技術実験機)による、小惑星Phaethonの探査計画の検討を進めています(注6)。今後、小惑星22106Tomokoaraiについても、地上での天文観測が進み、小惑星探査が計画されることへの期待が膨らみます。

(注1)Asteroid, Comets, and Meteors (ACM) 2014
http://www.helsinki.fi/acm2014/

(注2) 小惑星(22106)Tomokoaraiの過去の観測や軌道情報の詳細
http://www.minorplanetcenter.net/db_search/show_object?utf8=%E2%9C%93&object_id=22106

(注3)天文ニュースでの日本関連の小惑星命名に関する記事
http://www.astroarts.co.jp/news/2014/07/30minorplanet/index-j.shtml

(注4) Lowell Observatory Near-Earth Object Search (LONEOS)プログラム
http://neo.jpl.nasa.gov/programs/loneos.html

(注5) メインベルト小惑星、彗星―小惑星中間的天体の紹介記事
http://www.astroarts.co.jp/news/2006/04/20main_belt_comets/index-j.shtml

(注6) 小惑星3200 Phaethon探査計画
https://www.wakusei.jp/book/pp/2012/2012-3/2012-3-239.pdf
http://www.minorbody.org/future_sse/12.html