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学術雑誌Zookeysのカバーに掲載されました

NOAA(アメリカ海洋大気庁)の、2015年ホノルル-モアナ:ハワイ沖深海探査航海(2015 Hohonu Moana: Exploring Deep Waters off Hawai?i)の航海も終わりました。松本亜沙子です。

9月24日に学術雑誌「Zookeys 」に、私の論文が掲載され、雑誌のカバーとなりました(左側が表紙写真となります)。

この論文は、日本の磯で最も一般的に見られるイソバナ(磯花)やイソハナビ(磯花火)という深海から冷水域に生息するサンゴの仲間 ((Cold-water coral, Deep water coral, Deep sea coral)の、日本に存在する深海から浅海までの全種を網羅したものです。今回新たに11新種が日本から発見されました!リンクからダウンロードできますが、図が大量にあるので127ページあるのでお気をつけ下さい。

表紙写真になったのは新種のひとつMelithaea isonoi (UMUTZ-CnidG-34)で、名前は、日本の江戸時代~明治の動物学史の研究をされていた磯野直秀氏に献名させていただいたものです。

(Matsumoto & Ofwegen, 2015 Fig. 28c)

新種を記載した場合、その種名は論文を書く人が決めることが出来ます。今回は、このほか、Melthaea tanseiiという新種もあり、これは標本を採集した旧:学術研究船淡青丸にちなんで名前をつけたものです。また、オランダ国立自然史博物館(Naturalis) の共著者は新種の一つにMelithaea oyeniと博物館の技術者の名前を献名しました。

このサンゴの仲間は学術的には八放サンゴ亜綱に属しているのですが、暖かい熱帯の海のサンゴ礁が存在しない世界中の殆どの海の水深0mから数千メートルまでの深海での生物の重要な生息域を形成する生態系となっています。太平洋にしか分布しないのですが、一方で太平洋じゅうの深海から浅海までそこらじゅうでみつかります。お互いにとても良く似ていて属ですら場合によっては見分けがつかず太平洋の研究者が長年(100年くらい)苦労していたサンゴです。

このように新種を発表するためには、これまで日本で採集されたすべてのイソバナの種類の最初の標本を全部探す必要があります。今回のサンゴは、スウェーデンのウプサラ大学進化博物館、デンマークのコペンハーゲン大学動物学博物館、イギリスの大英自然史博物館(ロンドン自然史博物館)、ケンブリッジ動物学博物館(進化論ダーウィンのガラパゴス標本が所蔵されています)、ドイツのミュンヘン州立動物学博物館、ベルリン自然史博物館(フンボルト大学自然史博物館)、ハンブルク大学動物学博物館、フランスのストラスブール大学動物学博物館、オーストリアのウィーン自然史博物館、オランダ国立自然史博物館(ナチュラリス)、アメリカのスミソニアン国立自然史博物館、ハーバード大学比較動物学博物館、日本の東京大学総合研究博物館、京都大学瀬戸臨海実験所、北海道大学愛冠自然史博物館などの標本を網羅しました。多くが100年以上前に採集されているサンゴ標本です。

サンゴ標本が何故、どのようにして100年前に日本から採集されたのかに関しては、拙著「海洋生物学の冒険」(2014, 人間と歴史社)に書いてみましたので興味のある方は図書館や下記のネット書店↓などで探していただけたら嬉しいです。

http://www.amazon.co.jp/dp/4890071946

http://honto.jp/netstore/pd-book_26347512.html

(松本亜沙子)