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NOAA(アメリカ海洋大気庁)の深海探査航海Leg.4がスタートしました

ハワイ時間の9月12日(土)からNOAA(アメリカ海洋大気庁)の、2015年ホノルル-モアナ:ハワイ沖深海探査航海(2015 Hohonu Moana: Exploring Deep Waters off Hawai?i)のLeg.4がスタートしました。科学チームに参加しております松本亜沙子です。

当初9月7日開始の予定でしたが、機器類の調整のため12日まで出航が延期されていました。最初の調査ポイントでのダイブを終え、現在次の調査ポイントに向けて航海中です。次のダイブは9月17日(木)の予定です。

Leg.3の最後のダイブは第一次世界大戦後1938年に水深415mの地点に人為的に沈められたアメリカの潜水艦S-19へのものでした。このサイトの位置情報は秘密にされており、調査研究者も参加には守秘義務の署名が必要でした。このような人工物での調査の利点は、その上に付着している生物の年齢が正確に分かることです。今回の場合潜水艦上のサンゴ群集が潜水艦が沈められてからの75年間で成長したということが分かります。ダイブでは同海域同水深でも何故かこの潜水艦にしか生息していない種類のサンゴがあり、その理由は今のところ不明です。写真に映っているのがいつもCamera1でクローズアップなどをしているビークルと潜水艦S-19です。

Image courtesy of the NOAA Office of Ocean Exploration and Research, 2015 Hohonu Moana.

今回の潜水船の調査はハワイの宝石サンゴをはじめとする深海に生息するサンゴをターゲットとしています。これらはヨーロッパでは主として冷水域サンゴ(CWC (Cold-water coral))、アメリカでは深海サンゴ(DWC (Deep water coral), DSC (Deep sea coral))などと様々な呼称で呼ばれています。熱帯の浅い暖かい海にあるサンゴ礁ではなく、深く、暗く、冷たい海である大陸棚斜面、海山、海嶺、フィヨルドなどに生息するサンゴ礁またはサンゴ群集です。数千メートルから0メートルの広い水深に分布しており、そのため潜水船のターゲット水深も広い範囲になっています。深海・冷水域サンゴは生物学的には、イソギンチャク、サンゴ礁のサンゴや黒サンゴが含まれる六放サンゴ亜綱、宝石サンゴが含まれる八放サンゴ亜綱、かつて生物学者であった昭和天皇が研究していたヒドロ虫綱などで構成されています。大西洋における深海・冷水域サンゴ群集は礁を造る六放サンゴ亜綱が主であるのに対して、日本やハワイなどの太平洋では、八放サンゴ亜綱を中心とした樹木状の形態の種が中心になっておりサンゴの森などと言われています。熱帯雨林や熱帯のサンゴ礁と同様に、深海での生物の重要な生息域を形成する生態系となっています。写真では左にウミユリの仲間、右にクモヒトデの仲間がくっついているのが分かります。これらの生物はサンゴを食べているわけではなく、サンゴを足場として水中のプランクトンを捕食しています。

Image courtesy of the NOAA Office of Ocean Exploration and Research, 2015 Hohonu Moana.

潜水船のカメラからのストリーミングの映像は母船からは衛星を中継してインターネットでブロードキャストしています。衛星との接続が悪い時には映像が途切れたり、映像が見られないタイミングもあるかもしれません。通信が途絶えているときは、赤い丸が点滅している表示になります。映像は切り替えでHDでも見ることが出来ます。興味の或る方はライブストリーミングをご覧下さい。 http://oceanexplorer.noaa.gov/okeanos/media/exstream/exstream.html

ハイライトの動画をホームページで見ることが出来ますので、ライブの時間外でストリーミングが見られなかった方も映像を見ることが出来ます。是非ストリーミングをご覧になって海洋調査と海底の美しい深海のサンゴ礁を楽しんでみて下さい。

航海の詳細は以下のページになります。
http://oceanexplorer.noaa.gov/okeanos/explorations/ex1504/welcome.html

(松本亜沙子)