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DESTINY+ダストアナライザエンジニアリングモデル噛み合わせ試験

深宇宙探査技術実証機DESTINY+に搭載予定のダストアナライザ(DESTINY+ Dust Analyser: DDA)のエレキ部のエンジニアリングモデル(Engineering Model: EM)と、ミッションデータ処理装置「MDP (Mission Data Processor)」のEMとの噛み合わせ試験を、3月下旬にJAXA宇宙科学研究所にて実施してきました。この試験はだいぶ前にご紹介したDESTINY+ダストアナライザ電気モデル噛み合わせ試験に続くもので、実際に宇宙に行くモデルに近い機能・性能をもつEM品を用いています。

DDAはドイツ・シュトゥットガルト大学が主体となって開発が進められており、千葉工業大学・惑星探査研究センターはDDAと探査機システム間のインタフェース調整や、観測データを用いたサイエンス検討を担っています。今回の試験ではドイツ側のソフトウェア設計担当者2名が来日し、JAXAの方々と一緒に試験を行いました。下の写真はDDAエレキ部のEMの外観と試験の様子です。以前ご紹介したESIMと比較していただくと、コネクタが増えていて外見も少しずつフライト品に近い姿になっているのがお分かりいただけるかと思います。

今回の試験では、前回と同様電源インタフェースやテレメトリ/コマンドの送受信機能の確認に加え、DDAセンサ部の指向方向を変えるためのステッピングモータの駆動確認や、太陽方向に応じた高圧電源の自動オフ機能など、より包括的なDDAの機能検証を行いました。後者の高圧電源の自動オフ機能について少しだけ説明すると、DDAのセンサ部(バケツ形状の底部分)には数千Vの高電圧がかかる電子増倍管が搭載されており、そこに太陽光が当たってしまうと大きな電流が流れ、永続的な故障が発生しダスト観測ができなくなってしまいます。そこでDDAでは、探査機システムから太陽がどちらの方向にあるか毎秒情報をもらいながら、センサ部の視野と太陽方向の角度をリアルタイムに計算して、一定の角度を超えると高圧電源を自動的にオフすることで致命的な故障を回避する機能が備わっています。今回の試験中、この角度計算に誤りがあることが判明したのですが、その場でトライアンドエラーを繰り返しながら、最終的には想定通りに機能するようソフトウェアを修正することができました。その他にも、機器の内部に地上試験用の隠しスイッチがあることを来日したドイツメンバーも知らず、それが原因でうまく動作しなかったりなど、肝を冷やすシーンが何度かありましたが、結果的に全てその場でバグ取りでき必要な試験を概ね完了することができました。

今後はあまり間をあけずに(つまり年内に...)次の試験が実施される予定ですので、本ブログでも頻繁に進捗報告していけたらなと思っています。

(平井隆之)