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圧電性PZT放射線試験実施!

水星探査機ベピコロンボ搭載ダストモニター火星衛星探査機MMX搭載ダストモニターには、センサとして圧電セラミックのPZT振動子が使われています。センサーとして探査機構体の外側に置かれるので放射線シールドもなく強い放射線にさらされます。圧電性PZTには、 圧電性(機械振動を電気信号に変換する性質、ダスト衝突の衝撃を電気信号として取り出すための性質) がありますが、わずかながら劣化すると分かっています。ベピコロンボやMMXのそれぞれの環境条件で大きな性能劣化はほとんどないことはこれまでの放射線試験で確認できていますが、今後のミッションのためにもどのくらい過酷な放射線環境まで耐えうるのか詳しく知っておく必要があります。

わずかながら劣化すると書きましたが、放射線には種類があって以前には重イオンビームを照射する実験を行いました。今回、電子線を照射して以前の実験結果と比較することでどのようなメカニズムによる性能劣化なのか調べたいと思っています。

放射線試験は、以前、このブログでも紹介した木星氷衛星探査機JUICE搭載のガニメデレーザー高度計GALAに使うアバランシェフォトダイオードAPDの放射線試験を行った京都大学原子力複合科学研究所の電子加速器で2020年1月に行いました。下の写真は、ビームラインに圧電性PZTの供試体をセットするために位置合わせをしているところです。

電子線加速器のビームラインに設置した供試体固定・位置合わせジグ

下の写真は供試体がアップです。白く丸いのが圧電性PZTの試験サンプルで、その周りのアクリル製の固定具に取り付けています。照射前の固定具は斜め下の写真のように透明なものなのですが、照射後は放射線で焼けて茶色に変色しています。この固定具は、少し凝った作りになっているのですが、千葉工業大学の工作センターで製作してもらいました。

圧電性PZTの放射線劣化の度合いは非常に小さいため、時間的に加速するために大強度の電子線を照射する必要があります。そのために供試体が高温になるため、写真のように空冷用のブロアで空冷をしながら電子線の照射をします。

供試体の圧電性PZTとその固定具。斜め下の写真は、照射前のアクリル製固定具。

今回の試験では、照射中の温度もうまくコントロールができてよいデータがとれました。照射条件を変えて試験をおこなったので、先行研究の結果との比較など、データ解析を行っているところです。

今後も装置開発に関係する色々な試験を行う予定ですので、状況報告などをこのブログでお知らせしようと思います。応援よろしくお願いいたします。

(小林正規)