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千葉県総合教育センター研修会(2025年度)を実施しました — 火星の“青い夕焼け”を再現!

少し前のお話ですが、2025年8月26日、千葉工業大学・惑星探査研究センター(PERC)にて、千葉県総合教育センター主催の研修会「宇宙研究に学ぶ実践研修(理科)」を今年も実施しました。
今回は計27名の教員・教育関係者の皆様にご参加いただき、7つのグループに分かれて実験やデータ解析を体験していただきました。

■午前:火星の「青い夕焼け」を教室で再現!

今年の午前プログラムは、昨年度の分光観測から大きく内容を刷新し、火星の“青い夕焼け”を再現する実験をテーマに実施しました。
火星では、夕方に太陽が沈む際、空が青みを帯びて見えることが知られています。これは、火星大気中に浮遊する微細なダストが太陽光をミー散乱するためで、地球の赤い夕焼けとは逆の色合いを示します。
今回の再現実験では、次のようなシンプルなセットアップで実験を行いました:

  • 透明な水槽に水を満たす
  • 酸化チタン、またはヘマタイト(1 μm 程度の微粒子)を少量混ぜて火星ダストを模擬
  • 水槽側面からLEDライトを入射(白色光で太陽光模擬)
  • 反対側に届く光の色の変化を観察(LED光の反対側からの観察)

混ぜた微粒子が太陽光中の短波長(青)成分を選択的に前方に散乱し、観察側で青く見える現象を再現できました。
実験中には、
「本当に青く見える!」といった声が上がり、参加者の皆さんも驚かれた様子でした。
この観察を踏まえ、火星大気の特徴ダストのサイズ分布ミー散乱の物理について解説し、さらに

  • 火星探査機が撮影した青い夕焼け画像
  • MMX(火星衛星探査)でPERCが開発した CMDM(Circum-Martian Dust Monitor) の観測目的と意義

についても紹介しました。

■午後:はやぶさ2の衝突実験を再現するワークショップ

午後は、昨年度に引き続き 「はやぶさ2」の衝突装置SCI を題材に、クレーター形成の実験を行いました。まず、SCIの開発に参画した和田浩二副所長・主席研究員から、SCIの開発秘話やクレーター形成についての講演があったあと、各グループでクレーター形成実験を行いました。

  • 細粒ビーズやセラミックス粉末を用いた模擬レゴリス
  • 隕石を模擬した小型の衝突体
  • スマートフォンによるスロー撮影

を組み合わせて、各グループで衝突・噴出・クレーター形成の様子を観察しました。レゴリスというのは、天体の表層に存在する岩石などの細かい破片です。実験では模擬レゴリスは、グループごとに粒径・形状が違うものを使いました。小型の衝突体を模擬レゴリスを敷き詰めた「たらい」に落として巻き上がるイジェクタの様子を動画に撮った後、

  • クレーター径の測定
  • 動画をスロー再生してイジェクタの広がり方の観察

を参加者の方々に行っていただきました。そのデータを基に、和田副所長が実際の探査ミッションで使用される「クレーター・スケーリング則」との比較を行い、宇宙探査のデータを見る視点を共有する時間となりました。

小林正規