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気球からの空中発射「ロックーン」への挑戦-姿勢制御装置の試験 は大成功!

 PERCでは宇宙塵採集を目的として、AstroX社と共同で、気球を使ったハイブリッ ドロケットの空中発射技術を研究しています。ロケットを気球に吊るして高高度ま で持ち上げ、そこから発射する「ロックーン(Rockoon)」という方式です。 今回は、最近実施した2つの重要な試験についてご報告します。

地上設備と放球装置の試験(南相馬市・下蛯沢地区)

 まずは、気球を地上から解き放つ際の地上設備と放球装置の試験を行いました。 気球の運用で難しいのは、屋外の風に流される中で、いかに安全かつ機材を損傷さ せずに地面との固定を切り離すかという点です。気球が大きくなるほど風の影響を 受けやすく取り扱いが難しくなります。特にロックーンでは、吊り下げるものが 「ロケットとランチャー」という複雑な形状をしているため、特殊な放球機構が必 要になります。

 試験では、開発した放球装置から模擬ランチャーとロケットをクレーンで上方に引 き抜く検証を行いました。クレーンの巻き上げ速度に制限があるため、実際の気球 の上昇速度よりはかなり低速ではありましたが、無事に実験は成功しました。

離脱前

離脱後

ハイブリッドロケット空中発射試験(南相馬市・井田川地区)

 ロックーンは地面に固定したランチャーではなく、空中に浮かぶ気球から発射する ため、CMG(コントロール・モーメント・ジャイロ)という原理を用いた姿勢制御 装置が不可欠です。 2月14日未明、井田川地区にて、開発した姿勢制御装置に取り付けたランチャーか ら、小型ですが本物のハイブリッドロケットを空中発射する試験を行いました。

 以前のブログでも同様の試験をご紹介しましたが、あの時はあくまで原理実証。火 薬を用いたモデルロケットと小型CMGでの挑戦でした。しかし今回は、液体酸化剤 を搭載した「ハイブリッドロケット」と、それに合わせて大型化したCMG装置、更 に推進剤の充填装置も備えています。 また、制御面も大きく進化しました。前回は方位角を目で見て手元のレバーを動か す「手動制御」でしたが、今回は目標の方位角を入力してスタートすれば、装置が 自分で方位を検知して維持する「自動制御」を実装しています。 これまでの単体試験では、室内でロケットと同じ重さのダミーを載せて動作確認を するまででしたが、今回は初めての屋外。風が吹く状況で実際にロケットを発射さ せ、離脱時の衝撃によって生じる姿勢の乱れをどれだけ抑えられるか、という検証 データを取得しました。

空中に吊るしたランチャからの発射試験の様子

試験の結果:見た目は悪いが100%の成功

 結果から言えば、ロケット本体に異常が発生し、ランチャーを離脱した直後に付近 に落下してしまいました。早起きして見に来てくださった観客の皆さんも残念そう にされていましたが……実はこれ、 「大成功」 なのです。 ロケットは推力不足でふらついていましたが、それでも姿勢制御装置はしっかりと ランチャーの姿勢を維持し続けてくれました。見た目こそ悪い結果になってしまい ましたが、姿勢制御装置の性能を証明し、貴重なデータを取得できたという点で は、当初の試験目的に照らすと「100%成功」と言えます。速報データでは未知の姿 勢挙動も見られており、これからの分析が非常に楽しみです。

(庄山 直芳)