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SAKURA放出の日
宇宙産業の高度技術者育成プログラム担当の原田です。
現在、1号機衛星「YOMOGI」は初期運用で基本機能が確認できたため、現在は定常運用に移行しております。
日付は少し遡って、現学部4年生が製造した3号機「SAKURA」が国際宇宙ステーション(ISS)から放出された2024年8月29日を振り返りたいと思います。
人工衛星が国際宇宙ステーション(ISS)から放出される際、筑波宇宙センターで放出イベントが開催されます。私達も16時過ぎに筑波宇宙センターに集合しました。千葉工大津田沼キャンパスからは約1時間の小旅行です。
「きぼう」運用管制室の後方にあるVIP室から見える景色は映画の世界そのものでした。モニタ、世界中の時計が所狭しと置かれており、ヘッドセットをつけた管制官がいます。

筑波宇宙センターの管制室 後方にVIP室がある (画像提供:JAXA/NASA)
イベントでは、人工衛星の開発チームそれぞれが『Go/No Call』という事をします。管制官が「〇〇チーム、放出しても良いですか?」と英語で聞いてくるので、「Go!」とみんなでコールするのです。その練習後、本番前の休憩中に星出宇宙飛行士とお話をさせていただく機会もありました。ご褒美のような感覚でした。
18:20にSAKURAをISSから放出。各チーム「Go」とコールし、そのコールを受けて管制官が衛星放出のコマンドをISSに送信しました。
何もないところから始まってようやく衛星を宇宙に届けることができた安堵、SAKURAがアンテナを展開し電波を出すのかと心配もし、そしてこれから始まる人工衛星のある生活にわくわくするという複雑な気分でした。

コールの様子 (画像提供:JAXA/NASA)

ISSからSAKURAが放出される様子 (画像提供:JAXA/NASA)
イベントは19時過ぎに終了しました。本来であれば、このまま祝勝会に流れ込む気分ですが、これからが衛星観側作業の本番です。22時すぎに千葉工大上空を通過するのでそれまでに千葉工大に戻って準備をしなければいけません。
SAKURAは放出30分後から電波を出します。そのため、千葉工大上空を通過する22時までの間は、海外のアマチュア無線家が電波を拾ってないか確認してくれます。放出後30分間は無信号のため、無信号の報告がされていきます。30分すぎても無信号の状態でチームに緊張感が増します。35分を過ぎたころ、学生から「受信できてる!」との興奮した声での報告が。人の少なくなったつくば駅のプラットホームで我々は喜び合いました。ものづくりは間違ってなかったと思う瞬間でした。
その後の運用は順調そのもので、運用期間を全うすることができました。
(原田 徹郎)