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DESTINY+ダストアナライザ詳細設計審査会への参加

 6月末にドイツ航空宇宙センター(DLR)・ボンで開催された、DESTINY+ダストアナライザ※1(以下、DDA)の詳細設計審査会に参加してきました。詳細設計審査会とはいわゆる「CDR(Critical Design Review)」と呼ばれるもので、衛星やその搭載機器の開発において、実際に宇宙に行くフライトモデルの製造・試験フェーズへ移行してよいかを判断するための、文字通り"Critical"な審査会です(実はDDAのCDRは既に昨年2023年7月に実施しているのですが、色々と課題があったりスケジュールが延びたりで、今回はリテイクとなるΔCDRと呼ばれるものです)。日本からは、探査機システム側を代表してJAXAの方々と、DDAと探査機システム間のインタフェース調整役として筆者が参加しました。

 審査では、開発仕様書などに規定した機能・性能を実現可能な設計・試験計画・スケジュールになっているか、探査機システムとのインタフェース条件に適合しているかといった点を、DDAチームから提示された文書をもとに審査員が確認し、不備や懸念などがあれば機器チームに宛てた指摘票が発行されます。DDAチームは指摘票に適切に回答し、関係者間で"合意"に至ることができれば審査終了となり、晴れて次フェーズへ移行します。

 もちろんこの一連の作業を数日でやり切ることは不可能ですので、実際は数ヶ月程度の期間を設けています。今回参加したのはΔCDR期間の中間地点に位置するCollocation Meetingと呼ばれるもので、その1ヶ月前から発行された指摘票の概要と処置状況、特に議論が必要と思われる重要指摘について確認・議論する場でした。タイミングとしては日本のCDRでの「本審査会」に近いですが、いつまでに指摘を閉じるかなど、色々な点で日本のそれとは異なります。これは日独の違いというより、プロジェクトを構成する各組織の性質と、組織間の関係性の違いが大きいようです(もう少し早くこの違いを理解していれば...)。

 ややかしこまった審査会(Collocation Meeting)とは別枠で、DDAチームとはいくつかの重要課題について集中的な議論も行いました。普段DDAチームとのやりとりはメールとオンライン会議なのですが、今回は対面ということで、下の写真のようにホワイトボードを囲んでの熱い議論を交わすことできました。コロナ禍も経て、世の中ではリモートでのコミュニケーションが増えたかと思います。移動コストの削減などその恩恵はとても大きいですが、こういった互いの主張の擦り合わせが必要なシーンでは、対面でしか感じ取れない"熱"や"間"を共有することが重要なのだなと感じました。

ホワイトボードを囲んでの熱い議論

 審査会終了後には、DDAチームのメンバーとライン川沿いのレストランでドイツビールを堪能しました。この時期のドイツは日が長く22時近くまで明るいため、昼から飲んでいるような特別感を得られるのもいいところです。

ライン川沿いのレストランにてドイツビールを堪能

 本稿執筆時点ではまだΔCDRとしては閉じておりませんが、文書改訂や探査機システムとの調整など、審査終了に向けて頑張っていきたいと思います。

※1 DDAはドイツ・シュトゥットガルト大学が主体となって開発が進められており、千葉工業大学・惑星探査研究センターはDDAと探査機システム間のインタフェース調整や、観測データを用いたサイエンス検討を担っています。

(平井隆之)

DDAエレキボックス開発責任者のCarsten Wagner氏と筆者