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「NOAA(アメリカ海洋大気庁)の大西洋中央海嶺(MAR)深海探査航海~新しいブラックスモーカーの発見」

大西洋時間の7月17日(木)から9月1日までNOAA(アメリカ海洋大気庁)の、2022年大西洋中央海嶺(MAR: Mid Atlantic Ridge)深海探査航海のレグEX2205, EX2206に科学チームにコアメンバーとして参加していました、松本亜沙子です。

 NOAAの調査船「オケアノス・エクスプローラー(Okeanos Explorer:ギリシャ語で海洋探査)の航海の記事を書くのは久しぶりです。(これまでの記事へのリンクはこの記事の最後にあります)。

  2017年までオケアノスは太平洋を調査していたのですが、2018年からは大西洋での深海調査を行っています。

  今回の航海は、大西洋の中央を、至る大西洋の広範囲にわたって行われました。かつて、アルフレッド・ウェゲナーが大陸移動説をひらめいたというアフリカ大陸と南北アメリカ大陸を二つに分けたその割れ目、それが大西洋中央海嶺(Mid Atlantic Ridge)です。

 研究船・無人探査機(ROV)などのプラットフォームを用いた広域科学調査により、海域の基礎となる生物・海底資源などの地質の情報を収集することが目的です。本調査はAtlantic Seafloor Partnership for Integrated Research and Exploration (ASPIRE)の最終年度になり、通称Voyage to the Ridge 2022(2022年海嶺の旅)と呼ばれています。

Original NOAA Ocean Exploration field operations area for 2022 on NOAA Ship Okeanos Explorer. Lines indicate approximate tracklines for each expedition. White points represent ports. Image courtesy of NOAA Ocean Exploration.

7月17日から始まった本航海、実は5月に調査がスタートする予定だったのですが、船がドライドック入り(船を陸上に完全に上げて(ドライ)メンテナンスすることを言います)してしまい、ずっと延期になっていました。

7月になってようやく出航出来ましたので、今回は太平洋中央海嶺におけるハイライトのひとつ、活動しているブラックスモーカーの潜航をご紹介します。

大西洋プレートが生まれている大西洋中央海嶺で行われる本航海の目的の一つは、活発なプレート活動が行われている中央海嶺のまさにその現場であるブラックスモーカーを発見することにありました。

ブラックスモーカーとは海底で高温の水が染み出てくる熱水鉱床のことで、特に水に多量のミネラル類が含まれているのでその水が煙突からモクモクと煙が出ているように見えます。これらの熱水鉱床は最大350℃が観測されたことがあります。水に含まれているミネラルの種類によって、この“煙突”の色が変わります。

今回EX2205 Dive02の潜航水深2,947 m であらたなブラックスモーカーを発見することが出来ました。測定温度は熱い温泉程度の54℃でした。(画像下のリンクから動画を見ることが出来ます)

Active Black Smoker Hydrothermal Vent Image courtesy of NOAA Ocean Exploration, Voyage to the Ridge 2022. Remotely operated vehicle Deep Discoverer images an active black smoker hydrothermal vent seen near the end of Dive 02 of the second Voyage to the Ridge 2022 expedition. https://oceanexplorer.noaa.gov/okeanos/explorations/22voyage-to-the-ridge/gallery/media/ex2205-dive02-smoker-640×360.mp4?640

MAR航海では毎日のように海藻(ホンダワラ類の浮き藻)に非常に苦しめられ、潜水船のダイブが何回もキャンセルさせるなど影響を受けた航海でした。海藻が表層に浮いていると、船舶の取水口などに詰まってしまい、エンジンがオーバーヒートするなどのトラブルが発生し、船舶の航行が不能な状況になってしまいます。

実際にどのような状況であったのかの動画がありますのでご覧ください。https://oceanexplorer.noaa.gov/okeanos/explorations/22voyage-to-the-ridge/gallery/media/ex2206-sargassum-640×360.mp4?640

航海中はほぼ毎日潜水船による深海ダイブがありますが、サイエンスチームは衛星経由でライブストリーミング映像を共有しながら、研究者のディスカッション、そしてリアルタイムデータベース作成を行っています。1ダイブはだいたい6時間から9時間ほどで、日本時間では午後20:00頃~午前04:00頃になります。

現在航海は終わりましたが、ライブストリーミングの時間外には過去の動画を見ることが出来ます。 http://oceanexplorer.noaa.gov/okeanos/media/exstream/exstream.html

今回の大西洋中央海嶺探査航海(Voyage to the Ridge)の動画や写真なども以下のページから見ることが出来ます。http:// https://oceanexplorer.noaa.gov/okeanos/explorations/22voyage-to-the-ridge/welcome.html

去年までのNOAAの航海のブログは以下のリンクになります。

2015. 9.7 NOAA(アメリカ海洋大気庁)の深海探査航海中です

2015.9.16 NOAA(アメリカ海洋大気庁)の深海探査航海Leg.4がスタートしました

2016.6.20 NOAA(アメリカ海洋大気庁)のマリアナ深海探査航海の記事が掲載されました

2017.5.14 NOAA(アメリカ海洋大気庁)のサモア~中央太平洋深海探査航海中です

2017.12.16 NOAA(アメリカ海洋大気庁)のミュージシャン海山深海探査航海でECC(UH)に行って参りました

(松本亜沙子)