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千葉県教育センター研修会実施!

8月26日に津田沼校舎2号館3階の大教室で、千葉県教育センターの研修会が開催されました。千葉県の高等学校教員・教育関係者の方々に、高校生で習う物理学の知識でも理解できる宇宙に関する先進的な研究の実際に触れ、受講生の専門性を高め、学校での指導に役立てるということで「宇宙研究に学ぶ実践研修」というタイトルでの研修会でした。 難しそうに見える宇宙探査の技術も、高校生が理解できる物理の応用であること、身近なものを使って体験できるものであるということをPERCで行っている惑星探査の研究の紹介などを通じて参加者の方々に体験していただければと思って内容を考えました。

【1限目】はやぶさ2による衝突実験を体験

この時間は、はやぶさ2に搭載された小型搭載型衝突装置SCI(Small Carry-on Impactor)とDCAM3に関する内容で (https://www.perc.it-chiba.ac.jp/projects/hayabusa2/)、PERCの和田浩二主席研究員のSCIやDCAM3についての短い講義の後、SCIとDCAM3に因んだ実験を参加者の方々にやっていただきました。

写真1.和田浩二さんの講義風景

実験はすべて身の回りにあるものを使って行いました(写真2)。小惑星表面のレゴリスを模したサンドブラスタの研磨材(ガラスビーズなど)やガチャガチャのカプセルを利用した模擬隕石、そしてイジェクタが飛び出す瞬間を撮影するタブレットを準備して衝突イジェクタ実験を行いました。

写真2.用意したものはホームセンターなどで簡単に手に入るものばかり

事前に考えておいた実験の手順やコツなどをスライドで説明した後、

写真3.衝突実験の手順などを説明

少人数のグループ毎に実験をしてもらいました。

実験は、ボウルにいれた模擬砂(サンドブラスタの研磨材)にめがけて模擬隕石(おもりを入れたガチャガチャのカプセル)を1m程度の高さから落とすだけの単純なものですが、衝突の瞬間をスローモーション撮影すると写真4のようにきれいなイジェクタの放出の様子を捉えることができました。

写真4. あるグループが撮ったイジェクタ放出の瞬間!

そして、できたクレータのサイズを測定して、落下させる模擬隕石の質量と衝突速度とともにデータとして記録します。

写真5.できたクレータの大きさを測定している様子

カプセルの中に詰めるおもりの重さを変えたり、落下させる高さを変えてデータを集めたあと、和田浩二さんが各グループすべてのデータをまとめて考察を行いました。

参加者の方々には一生懸命に取り組んでいただけました。また、とても楽しそうに実験をされていたのが印象的でした。

 

【2限目】メテオによる科学的成果を体験

 2限目は、PERCが独自に取り組んだミッション、ISSからの流星観測カメラ・メテオについてでした(https://www.perc.it-chiba.ac.jp/projects/meteor/)。メテオのプロジェクトマネージャだった荒井朋子主席研究員がメテオについて講義を行い、それに続いて参加者には、流星カメラで流れ星の分光観測をする原理について実際に体験していただきました。

写真6.荒井さんによるメテオについての講義の風景

この実験には、透過型の回折格子を用意しました。インターネットで安価に手に入れることができます。それを小さく切ってカメラのレンズの前に貼るだけ、原理的にはこれで分光カメラができます。ただし、遠くにある星など点光源であればこれで分光カメラになるのですが、点光源ではない光だと分光している様子が分からないので、カメラの前に入射する光を絞るフードを厚紙で作ってもらってそれを取り付けるようにしました。大学でタブレットを用意していましたが、各自でお持ちのスマホなどを使ってもらいました。

身の回りにある照明でも、蛍光灯、LED、白熱灯、ハロゲンランプ、太陽の光など、それぞれスペクトルが違います。

写真7.簡単な工作でメテオ流星カメラと同じ分光観測ができます

手作り分光カメラでもそれらの違いをはっきりとわかり、参加者の方々は興味深そうにフード付きスマホを違う照明に向けて興味深そうに見入っていました。

写真7.皆さん、お手持ちのスマホなどを分光計に改造

【3限目および4限目】小型ロケット開発の成果を体験

 午後はロケット工学が専門の和田豊主席研究員(非常勤、機械電子創成工学科教授) による、ロケットが大気中で姿勢を安定させて飛ぶ仕組みについてでした。和田豊さんは科学観測ロケットを開発しています(https://www.perc.it-chiba.ac.jp/projects/sounding-rocket/)。

写真8.和田豊さんによる小型ロケットの姿勢安定についての講義風景

どのような仕組みなのか、説明をする前に参加者の方々にはとりあえず思い通りにロケットを作ってもらい、コンプレッサーを使った圧縮空気で打ち出してどうすれば安定して飛ぶのか実験してもらいました。

写真9.厚紙などを使って自分なりの小型ロケット製作

写真10.できあがりはこんな感じ

写真11.ロケットができたらすぐに飛ばして出来栄えを確認、写真の真ん中あたりに飛んでます

何も教わらずに作り始めた参加者の方々ですが、作ったロケットをコンプレッサーの圧縮空気で飛ばしては改良して試行錯誤を繰り返しました。しばらくの試行錯誤の後、和田豊主席研究員から大気中の姿勢安定の原理の説明を受け、さらに改良を続けて飛行時の姿勢安定と飛距離を伸ばしていくことができました。

最後は、和田豊さんがロケット開発を通じて行っている教育プログラムでの取り組みの紹介をして研修会を締めくくりました。

写真12.和田豊さんのロケット教育に関する講義風景

丸一日の研修会で準備も大変でしたが、参加していただいた方々は楽しめたようでしたし、この研修の内容を企画した私たちも楽しめた一日でした。

(小林正規)