小惑星探査機「はやぶさ2」、太陽系天体フライバイ探査における最小距離を更新
~小惑星トリフネフライバイにおける航法誘導制御の結果報告~
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2026年7月5日(日)に行った小惑星探査機「はやぶさ2」の小惑星「トリフネ」のフライバイ探査の探査機運用およびサイエンスデータを詳細に検討したところ、トリフネの中心からの最小距離は約744mであることが分かりました。また、この最短距離の地点を通過した時刻は、2026年7月5日、18:30:00.31±0.03秒です。
また、トリフネの表面からの最小距離は約400mとなりました。この距離は、これまで行われた太陽系天体フライバイ探査の中で最も天体の近くを通過したものとなります(図1)。
「はやぶさ2」の航法誘導制御について、最接近地点である目標点からのずれは120mとなりました。地上での電波光学複合航法および新規開発したオンボードの航法誘導ソフトウエアによる制御がおおよそ予定通りに機能したことになります(図2)。この航法誘導の結果より、探査機を小さな小惑星に衝突させることが可能な制御技術を実証したと言うことができ、日本のプラネタリーディフェンスにとって大きな前進となりました。
トリフネの大きさは長軸が約840m、短軸が約340m、また平均直径は540mと推定されました。また、トリフネの軌道の推定精度について、フライバイ時刻における誤差は、フライバイの前は49.5km(3σ)でしたが、フライバイ後には0.78km(3σ)になりました。小惑星の大きさやその軌道を非常に正確に推定できたことは、プラネタリーディフェンスにとって重要な成果になります。なお、今後、サイエンスデータの解析によってトリフネの物理的性質も推定されれば、さらにプラネタリーディフェンスに役に立つ情報が得られることになります。
注:今後のサイエンスデータの解析によりトリフネの形状モデルが改訂された場合、トリフネの中心および表面からの距離やトリフネの大きさの値が改定される可能性があります。

図1 フライバイの目標点と実際にフライバイした位置。この図では、探査機は紙面に垂直に移動している。(©JAXA)

図2 航法誘導制御の履歴(左の図の小惑星付近を拡大したものが右の図)。 探査機の軌道制御をすることによってトリフネへの最接近位置がどのように変化していったかを示している。(©JAXA)
①:TCM-Bによる制御(2026年7月1日、14:50 JST)
②:TCM-Cによる制御(2026年7月4日、17:50 JST)
③:TCM-Dによる制御(2026年7月5日、15:27 JST)
④:オンボードによる制御 [TCM:Trajectory Correction Maneuver、軌道制御]
千葉工業大学惑星探査研究センターとはやぶさ2
惑星探査研究センターのメンバーは「はやぶさ2」のほぼ全ての搭載観測機器の開発と運用、成果創出に参画してきました。
なかでも、千秋博紀主席研究員は、レーザ高度計(LIDAR)の開発と運用、解析に尽力しています。千秋主席研究員はその他にも近赤外分光計(NIRS3)のデータ処理や、中間赤外カメラ(TIR)のための数値モデルの開発も担当しています。
また、小惑星の観測や衛星の運用に必要不可欠な光学航法カメラ(ONC)の開発と観測計画の検討、得られたデータの解析に山田学上席研究員が大きな役割を果たしています。

