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新しいコマンドシステムを衛星通信用アンテナに増設します

 PERCの超小型衛星プロジェクトは、小さな衛星を使って、独自の惑星科学ミッションを継続的・高頻度に行うことを目的として立ち上げられました。このプロジェクトでは、日本初の大学衛星「観太くん(鯨生態観測衛星)」の運用に使われていた地上局を引き継ぎ、設備をオーバーホールした上で、初号機S-CUBE2号機ASTERISCの運用に活用しています。

 そして今回、その地上局のアンテナにS-bandのコマンド送信システムを新たに増設することになりました。これにより、今後予定している3号機以降のミッションにおいて、より高度な運用が可能になります。

 今回増設されるシステムは、主に以下の3つの機器で構成されています。

コマンド信号生成装置

 衛星に送る指令データ(デジタルデータ)を、所定の周波数・変調方式に従って電気信号に変換し、次のパワーアンプに送ります。指令データを電波で衛星に届けられるように、高周波信号にデータを乗せる重要な役割を担います。

パワーアンプ

 コマンド信号生成装置で作られた信号を衛星に届く強度まで増幅します。このとき、周波数や出力、ノイズ(スプリアス)を電波の免許で規定される範囲内に収める必要があります。これら3つのパラメタを設計通りに調整することは容易ではなく、無線通信の高度な技術が求められます。

アンテナ

 変換・増幅された信号を、衛星のいる方向に向けて電波として放射します。衛星は飛行中に姿勢が頻繁に変わるため、一方向のみに直線的に振動する電波(直線偏波)ではなく、電波の向きが回転する「円偏波」のアンテナを使用し、安定した衛星通信を実現します。綺麗な円偏波を放射できないと(専門的には、楕円偏波になると)、衛星側の受信強度が下がってしまうため、アンテナ開発にも妥協せず取り組んできました。

 このように、いずれの機器が1つでも性能が足りなければ、衛星にコマンドを正しく届けることはできません。そのため、開発には時間がかかりましたが、ようやく形になってきました。

 今回の増設によって、今後開発する衛星が、地上からの指令をこれまで以上に確実に、より多く受信できる環境が整います。今後のミッション展開にもどうぞご期待ください。

石丸 亮