PERC超小型衛星1号機:流星観測衛星「S-CUBE」Project

概要

千葉工業大学惑星探査研究センター(以下PERC)では、惑星科学探査を目的とする超小型衛星プロジェクトを立ち上げました。巨額の予算と長期に渡る開発 期間が必要である国による惑星探査とは対照的に、超小型衛星は大学規模のリソースにより短期間で独自に開発できることがメリットとして挙げられます。その初号機が、宇宙からの流星観測をミッションとする3Uキューブサット「S-CUBE(エスキューブ)」です。

キューブサットは10センチ角のユニットからなる超小型サイズでありながら、その可能性により、米国Science誌が選ぶ10大ブレークスルーに選ばれるなど、大きな注目を集めている超小型衛星です。S-CUBEはPERCを実施責任機関として、PERCと東北大学が共同で開発しました。

2015年9月17日に国際宇宙ステーション「きぼう」日本実験棟から地球周回軌道に投入され、その後1年以上にわたり千葉工業大学の地上局から運用された後、2016年11月23日に、軌道離脱(大気圏突入)しました。

超小型衛星プロジェクト:流星観測衛星「S-CUBE」のロゴ

研究ハイライト

2012年 PERC超小型衛星プロジェクトを立ち上げ。
2015年 8月19日20時50分49秒(日本標準時)
種子島宇宙センターにおいてS-CUBEを搭載したH-ⅡBロケット5号機が打上げに成功。

9月17日21時02分(日本時間)
国際宇宙ステーションの日本の実験棟「きぼう」から、油井宇宙飛行士がS-CUBEを地球周回軌道に放出。

9月19日
千葉工大地上局においてS-CUBEからの電波の受信に初めて成功。その後の地上局の調整により、安定したコマンド・テレメトリ通信を確立。
2016年 11月23日
大気圏に突入し、S-CUBE自身が流星となって消滅。1年以上という想定をはるかに超えた長期間の運用が終了した。衛星システムの基本的な機能である電源系・通信系が打ち上げから軌道離脱に至るまで正常に動作したことを確認。

S-CUBEのミッション

S-CUBEがターゲットとする流星は、太陽系始原天体である彗星や小惑星の塵が地球大気に衝突することで生じる現象です。そのため、流星観測は「間接的な太陽系始原天体探査」といえます。S-CUBEには科学測器として可視カメラと紫外線センサを搭載しますが、特に流星の紫外線の長期観測は世界初の試みであり、未知の流星紫外線の観測からは流星の発光メカニズムの解明や、流星塵成分の新たな情報を得ることが期待されます。また、地球に衝突する微小天体の頻度の時間変化や空間分布の評価につなげることができ、宇宙物質が地球にどれだけ供給されているのかを議論することが可能になります。

本開発には、千葉工業大学の鯨生態観測衛星WEOSや東北大学の2UキューブサットRAIKOの知見・ノウハウが生かされ、さらにリアクションホイールや伸展マストなど新たなシステムを追加することで、衛星バスとしても先進的で汎用性ある設計となっています。大学規模で独自に推進できる本プロジェクトを推進することにより、宇宙惑星探査の新たな方向性を切り拓きたいと考えています。

動画

ギャラリー

担当研究員:石丸 亮 (イシマル リョウ)
千葉工業大学 惑星探査研究センター 上席研究員