フリーズドライプロジェクトでは、パンスペルミア仮説を検証している。パンスペルミア仮説は、生命が隕石等によって、宇宙空間を自由に伝播しているとする仮説である(図1)。これまでに、生物学者や惑星科学者がこの仮説を、国際宇宙ステーション上での宇宙実験やシミュレーションを元に検証してきた。その結果、乾燥した微生物が隕石内部に存在した場合に長期生存可能であるというなどが分かった。しかし、それらの結果はパンスペルミア仮説の一部を支持しただけであり宇宙空間を生命が伝播可能であるかには多くの疑問が残っている。フリーズドライプロジェクトでは、生命が地球から宇宙へ伝播可能であるかに着目しパンスペルミア仮説の検証を行っている。また、宇宙での生命探査を目的として、赤外分光を用いた宇宙空間での凍結乾燥細胞の検出できるかを検証している。
パンスペルミア説においては、天体衝突により微生物が惑星から脱離するのではないかと考えられている。惑星の重力を振り切り、宇宙へ脱出するためには、秒速数キロメーター以上を持たなければいけない。その際、微生物細胞は急激な凍結及び乾燥状態に曝される。これまでに、地上で想定される凍結及び乾燥状態に対して、微生物の耐性は調べられてきた。しかし惑星からの脱離を模擬した環境での生存耐性は分かっていない。フリーズドライプロジェクトでは、微生物が惑星からの脱離を模擬した急激な凍結乾燥(フリーズドライ)に曝されても生存可能かを検証している。PERCの生物実験室で凍結乾燥細胞を作成し、生存率を調べている。
赤外分光を利用して、宇宙空間で凍結乾燥状態の微生物を検出できないかを検証している。近赤外から遠赤外に及ぶ広い範囲で凍結乾燥細胞の赤外スペクトル、及び紫外〜可視光での減光スペクトルを測定している。測定値をもとに、地上観測から得た赤外スペクトルと比較している。惑星探査機などにも搭載される赤外分光装置は、微生物の検出に適していると考えられる。
生物実験はPERC内の実験室で行なっている。赤外スペクトル測定は、茅原弘毅教授 (大阪産業大学)が担当している。