宇宙産業を中核で支える高度技術者育成プログラム
初号機衛星が2024年春に宇宙へ飛びたちます
<概要>
宇宙産業の拡大に伴い、人材不足が問題化する高度技術者を育成するための本学プログラムにおいて、製造訓練 / 実証衛星の、初の打上・宇宙実証を開始します。
<詳細>
世界の宇宙関連市場はここ数年で数倍に拡大しており、2040年には現在の自動車産業と並ぶ百数十兆円にまで拡大されると考えられています。我が国でも拡大するマーケットに参入するために、旧来の宇宙企業に留まらず多くのベンチャー企業がビジネスアイデアを提案し企業活動を開始しています。
しかしながら我が国の宇宙産業は過去十数年にわたり1兆円規模の市場に留まっており、新たなビジネスアイデアを実現するために不可欠な、確実に宇宙空間で作動する衛星の製造・運用を行える高度な技術者が圧倒的に不足(現在は研究・開発者を含めた就業人口は数千人以下→数兆円の市場獲得のためには数万人以上が必要)しています。
国内の多くの大学ではビジネスアイデアを生み出す高度な技術を実現するための研究・開発者の育成を進めています。その一方で本学では、建学の精神である「世界文化に技術で貢献する」に則って、これら研究・開発者のアイデアを確実に実現できる製造・運用能力を有する高度技術者を育成するために、2021年4月より高度技術者育成プログラムを開始しました。
本プログラムでは外部より「宇宙での動作実績」がある1辺が10cmの立方体サイズからなる重量約1kgの「キューブサット」(※1)と言われる超小型衛星の基本設計を導入し、本学学生がそれらの設計図に基づいて製造・組立・地上実証を行い、宇宙で確実に動作する衛星の製造・運用を目指します。また衛星打上に必要となる各種申請や試験を学生自らが経験することで、卒業後即戦力となる人材供給を目指しています。既に3機の衛星の製造・組立・試験を行っていますが、今回その初号機として、2号機が打上に必要な全ての審査を通過しました。本衛星は2023年11月頃にJAXA(宇宙航空研究開発機構)に引き渡された後、2024年春頃にFalcon9ロケットにより国際宇宙ステーションに持ち運ばれ、一定期間の保管を経て、軌道に投入される予定です。
なお本プログラムでは、引き続き1号機、3号機の審査も進めており、順次打上・宇宙空間での運用を目指します。また本学では今後、1~3号機の成果を踏まえた上で、2030年までに最大9機の衛星の打上を伴う高度技術者育成プログラムの継続を計画しています。
2号機衛星では提供された衛星基本設計に加え、撮影した画像1枚を地球上で画像に復元することを独自ミッションのミニマム・サクセスとして設定し、設計図に基づく衛星の製造・組立・試験に留まらず、独自ミッションの検討・実証も目指しています。また可能であれば、ステレオカメラによる測距、夜間光等を対象とした地球観測、APRS(※2)による一般アマチュア無線家へのメッセージ送受信、地磁気データの聴覚情報への変換にも挑戦します。
(※1)キューブサット
1辺10cmの立方体サイズ・1kg程度の質量からなる(1Uサイズの)超小型衛星。2003年の打ち上げを機に、世界的にも多くの大学・企業が参加し、衛星製造・運用の入口として活用されています。近年では3Uサイズの衛星単体、あるいは複数機をつかった実用的な衛星利用も始まっています。
(※2)APRS
Automatic Position Reporting Systemの略であり、アマチュア無線局がアマチュア無線電波上に生データをリアルタイムに配信するパケット通信プロトコルです。