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隕石の持つ様々な顔 ~鉄隕石 カンポ・デル・シエロ編~

 東京スカイツリータウン®キャンパスでは、隕石も展示しています。先日Xでお知らせさせて頂きましたが、9月に1個新しく隕石展示を追加し、全部で3種類(数としては4個)の隕石を見ることができるようになりました。これを受けここでは、展示している隕石を見るときに、どういうところに注目して見ると面白いかについてなど、紹介していきたいと思います。

新しく増えたのは一番左側の隕石、今日紹介するのは左から三番目の隕石です

是非その目で直接ご覧いただきたいため、ここでは隕石を接写した写真は掲載しません。ご容赦ください。

 まず、最初に紹介するのはカンポ・デル・シエロ隕石です。こちらは「鉄隕石」に分類され、主に鉄とニッケルの合金でできています。そして、特徴的なのは、不思議な幾何学的な模様です!この模様はウィドマンシュテッテン構造と呼ばれていて、一部の鉄隕石に特徴として見られる、人間には作り出すことのできない模様です。

 この模様の作り方はある意味簡単で、鉄とニッケルを溶かして混ぜたものをゆっくり冷せばよいだけなのですが、その「ゆっくり」が人間には難しい。100万年に1度のペースでゆっくり冷やす必要があります。このペースでゆっくり冷やすことは地球上では難しく、ある程度の大きさをもつ天体の中心部で、ゆっくり冷えることでできたと考えられています。地球の中心は金属だといわれていますが、それはまさに、このような鉄隕石が証拠として存在するからいえるのです。

 今は生活の中に鉄があふれていますが、古代の人にとって鉄は金よりも貴重でした。鉄は金の8倍、銀の40倍の価値があったとされる記録が残っています。そのような時代では鉄隕石は現代以上に価値があるものとされており、有名なツタンカーメンの棺の中からは、金でできた短剣とともに、鉄隕石から作られた短剣も発見されています。

ツタンカーメンの短剣 金の鞘に、鉄隕石からつくられた鉄剣が収められていた

 昔は王様におさめられていた貴重な鉄隕石。今では、スカイツリータウンキャンパスに行けば見ることができます。100万年に1度という、とてつもなく長い時間をかけてつくられたウィドマンシュテッテン構造を是非ご覧にお越しください。

(佐竹 渉)