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小惑星による掩蔽観測用の地図アプリ開発

今の時代、スマートフォンの地図アプリは多くの方にとって日常生活に欠かせないツールになっていると思います。今回は、惑星探査研究センターでも「地図アプリ」を開発して配布しているという、一風変わった話題をお送りします。

最近惑星探査研究センターのメンバーをはじめとする小惑星の研究者は、アマチュア天文家との連携で、小惑星による掩蔽観測を盛んに行うようになってきました(例: http://www.perc.it-chiba.ac.jp/news/7336)。掩蔽観測によって、探査機が訪れる小惑星の大きさや形状を事前に詳しく知ることができるためです。このような観測に役立つ地図アプリの開発を惑星探査研究センターで進めて観測者に提供しています。

以下はそのアプリ画面の一例です。2023年3月5日に日本上空を通過する小惑星 2001 CC21 (はやぶさ2拡張ミッション「はやぶさ2#」の訪問予定天体の一つ)による掩蔽観測のための情報が示されています。

2023年3月5日 小惑星2001 CC21による掩蔽観測の計画地図。実際の地図アプリはこちら。

青線で挟まれた範囲が小惑星の影の帯の大きさ(およそ幅600m)です。その上下に多数の平行線が引かれていますが、これは小惑星が通るかもしれない範囲を、小惑星の大きさの間隔で示しています。○点は、観測者が配置を予定している場所になります。

今回の掩蔽観測は、小惑星2001 CC21が通過する可能性のある範囲に多数の観測者をまんべんなく配置することで、どこかで小惑星そのものの影を捉えて、軌道を決定することを目的にしています。それができれば、次の掩蔽観測の機会には、精度良く求まった小惑星の軌道の直下に密な観測者配置を敷いて、小惑星の形を決める観測に移ります。

現在も開発は進行中です。例えば地図レイヤーを様々なものに変更できるようにしたり、地図上のクリックで標高・座標を取得・Google Mapへのリンクを表示するなど、掩蔽観測者の利便性を図るべく改善を進めています。

地図アプリは、Python言語のfoliumというパッケージを中心に開発し、最終的には国土地理院の地図データをJavaScriptを通じて表示するコードを生成しています。ソースコードはGitLabにて公開しています。掩蔽観測のためはもちろん、一般的な地図データの可視化という点でも関心をお持ちの方の助言や提案を歓迎いたします。

文責: 秋田谷