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10月11日はPhaethon発見記念日
Phaethonとは
小惑星 (3200) Phaethon(フェートン、ファエトンなどと呼ばれる、以下Phaethon)は、日本の次期小惑星ミッションであるデスティニープラス (深宇宙探査技術実証機、DESTINY+)の目標天体です。Phaethonは毎年12月中旬に出現するふたご座流星群の母親天体であり、太陽近傍で塵(ちり)を出している活動的小惑星です。
10月11日はPhaethon発見記念日
Phaethonは、1983年10月11日、赤外線天文衛星 (IRAS) の画像データから、高速で移動する小天体を調べていた際に、イギリスのSimon Green博士(以下 Green氏)とJohn Davies博士が発見しました。国際天文学連合(IAU)に報告された時点では1983TBという仮符号が付けられましたが、後に Green氏によって「Phaethon」と命名されました。その後、天体の軌道要素がふたご座流星群のそれと近いことがFred Whipple博士やGreen氏により報告され、ふたご座流星群の母親天体であることが明らかになりました。
Simon Green博士のPhaethon発見と命名秘話
Green氏(現在、英オープン大学教授)は、DESTINY+ミッションのサイエンスチームの名誉メンバーであり、DESTINY+の国際サイエンス会議にも参加されます。今日は、Phaethonの発見記念日ということで、Green氏から伺った「Phaethon」の命名秘話をご紹介します。
Phaethonを発見した当時、Green氏は博士課程の学生で、Davies博士はGreen氏の研究サポートをするポスドク研究員でした。IRAS衛星のデータから高速移動小天体を見つけるプロジェクトは、Green氏の博士課程論文のテーマだったため、学生という立場でしたが、発見天体に命名する権利をもらうことができました。その当時、発見した小天体にふざけた(英語でflippantと言われていました) 名前を付けることが多い中、太陽に非常に接近する、この特異な天体には、古典的な名前を付けたいと考えたそうです。ふたご座流星群の母親天体なので、ギリシャ神話の双子Geminidsの兄弟の両親の名前を使おうと思ったがすでに使われていたため、同僚の研究者からの提案も踏まえ、ギリシャ神話の太陽神Heliosの息子であるPhaethonに決めたそうです。
Phaethonの日本語表記
DESTINY+プロジェクトの文書では、基本的には英語表記である「Phaethon」を使用しています。なぜなら、パエトーン、ファエトン、ファエソン、フェートン、フェイトン、フェーソン、フェイソン、フェトーンなど、読み方によって日本語表記が色々とあるからです。DESTINY+の理学ミッションの基になった、日本惑星科学会への「小惑星Phaethon探査計画提案」でも、混乱を避けるため英語表記を使った経緯があります。
日本語での発表や日本語表記が必要な場合、DESTINY+プロジェクトでは「フェートン」を使っています。これは、Phaethon発見者かつ命名者であるGreen氏の発音にならったものです。ただ、Green氏によると、英国でも人によって発音は微妙に違うようです。
PhaethonからDESTINY+ へ
1983年10月11日 、IRAS衛星のデータからGreen氏によりPhaethon (1983TB)が発見され、その後ふたご座流星群との親子関係が明らかになり、Phaethonへの探査計画が提案され、DESTINY+がプロジェクトとなり、Phaethonに探査機を送る計画が今まさに進んでいます!
Phaethonの発見に感謝しつつ、DESTINY+の打上げを目指し、気を引き締めて取り組んで参ります。 これからも応援よろしくお願いします!
(文責) 荒井朋子