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iSALE講習会2020開催

6月2日から6月30日に渡って数値衝突計算コード「iSALE」の講習会が行われました. iSALEはImpact-SALE (Simplified Arbitrary Lagrangian Eulerian)の略で欧米の研究者を中心に開発, 保守されているコードです. 私(黒澤)は日本国内のユーザグループの代表を務めており, 定期的な講習会や勉強会を開催しています. 2017年度より国立天文台天文シミュレーションプロジェクトのご協力を頂き, 国立天文台構内で開催されてきました. 今年度も同様の計画だったのですが, 新型コロナウイルス感染拡大防止のため現地開催が困難となりました. そこで持ち上がったのがオンラインでの講習会開催案です. 例年は3日間の詰め込み講習でしたが, オンラインでの詰め込み講習は講師も参加者も辛いだろうということで6月の毎週火曜日に2時間半, 合計12.5時間の講習を行うことに決定しました. メーリングリストに案内を流し, 初めての試みに参加者が集まるのかどうか緊張していましたが, 結果的に過去最大人数の22名の参加者が集いました. 

オンライン開催では例年行っていたパワーポイントで作成した教材だけでは貧弱だろうと, テキストを執筆することにしました. 首都圏の緊急事態宣言の発令に合わせて千葉工業大学も入校制限措置をとっていたこともあり, 普段行っている衝突実験(黒澤はPERCでは高速度衝突プロジェクトを担当しています.)を行うことができず, テキストの執筆がめちゃくちゃ捗りました. 通読すれば惑星科学に必要な数値衝突計算の知識を会得できるように執筆したつもりですので, ご興味のある方は御覧ください(https://www.wakusei.jp/~impact/wiki/iSALE/?第5回+iSALE講習会 よりダウンロードできます.).

オンライン開催にあたり, ビジネスチャットツールであるSlackでチャンネルを作成したり, ビジネス会話ツールのCisco WebExを導入し, 準備万端のつもりで初日の6月2日を迎えました. 千葉工業大学ではもともと全教職員がCisco WebExの時間無制限アカウントを利用可能になっており, 今回のような特殊な事態に柔軟に対応することができました. オンライン講習では参加者の習熟度を表情などから読み取ることができず大変に苦労しました. しかし, 今年度の講習会は学部学生, 大学院修士学生14名を含んでおり, 若い学生たちに千葉工業大学惑星探査研究センターで培ってきた衝突研究の知見の一端を伝える機会ができてよかったな, と講習会を終えて感じています. 今後は参加者各位がiSALEを武器にして惑星科学の諸問題に切り込んでくれることを期待しています. 

講習会用に準備した解析•描画スクリプトによる作図例. 衝撃波面を赤, 膨張波面(圧力が下がった面)を緑で示しています.

謝辞: 講習会の開催にあたりご尽力下さった国立天文台天文シミュレーションプロジェクトの皆様に御礼申し上げます. iSALEの開発者であるG. Collins, K. Wünnemann, B. Ivanov, J. Melosh, D. Elbeshausen, T. Davisonの各氏に感謝致します.

(黒澤 耕介)