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PERC超小型科学衛星プロジェクト

PERCでは、惑星科学探査を目的とする超小型衛星プロジェクトを新たに立ち上げました。このプロジェクトに関する初めての記事なので、おおまかですが、プロジェクトについてご紹介したいと思います。

現在開発している初号機は10cm立方のユニット(U)を3つつなげた3Uキューブサットと呼ばれる衛星です(打ち上がれば日本初の3Uキューブサットになる予定です)。東北大学との共同開発です。初号機のミッションは宇宙から流星の発光を観測することでして、衛星の名前はS-CUBE(エスキューブ)といいます。この名前は、流星観測衛星を意味する「Shooting-star Sensing Satellite」の頭文字にSが3つ並ぶため、Sの3乗を表す「S cubed」から取っていますが、実はもう一つの意味として、理学観測志向のキューブサットを意味する「Science-oriented CubeSat」にもかけていたりします。今までキューブサットは教育目的や技術実証目的で使われるのが一般的でしたが、それらとは一線を画すものにしたいという意気込み(願望?)が込められています。

初号機がターゲットとする流星は、太陽系始原天体である彗星や小惑星の塵が地球大気に衝突する(ぶつかる)ことで生じる現象です。そのため、流星の観測をすることで地球に居ながらにして太陽系始原天体の情報(軌道、組成など)を得ることができます。また、地球に衝突する微小天体の頻度の時間変化や空間分布の評価につなげることができ、宇宙物質が地球にどれだけ供給されているのかを議論することが可能になります。人工衛星を使うと、天候に依らず定常的に流星を観測できたり、衛星が地球を周回するので北半球から南半球までぐるりと観測できるメリットがあったりします。実は他にも、宇宙観測の大きなメリットがあるのですが(しかもそれがS-CUBEだからできる、メインミッションの一つになっています)、紙面の都合上、この話は次回にとっておくことにします。

最後に、開発の現状について簡単に。現在、実際に宇宙に打ち上げるフライトモデルの構体(衛星のボディのことです)の設計を進めています。構体は、搭載機器をうまく配置して(例えば、機器をつなぐケーブルの取り回しや、衛星の重心を中心に持ってくるなどを考えるのが結構大変)固定できるように設計しなくてはいけないですし、ロケットの振動に耐えられる強度を持つと同時に小型・軽量化を考えねばなりません。実は、衛星打上げの価格は衛星重量に依るので(キログラムあたりの価格で提示されます)、頑丈にするためいたずらに重量を増やすと予算に跳ね返ってきます。そこで、何度も何度も設計変更を繰り返して、最適な設計を求めねばなりません。3D CADモデリングは確かに優れものなのですが、その設計が物理的にありえない構造になっていたり、組み立てられない構造だったりすることもあるので、実際にモックアップという立体モデルを作ってみて検証することは非常に重要です。S-CUBEでも、以下の写真のような、紙のモックアップ1号、3Dプリンタで作ったモックアップ2号を経て、フライトモデルの設計ができつつあります(特にモックアップ1号は夏休みの工作のようですが、、、これでわかることが結構あるんです)。今月中に設計を最終化して、来月からはいよいよフライトモデルの加工に入る予定です!今後もS-CUBEについて報告していきますのでどうぞご期待ください!
(石丸 亮)

モックアップ2号(3Dプリンタにより作成)

最新(2014/08/25現在)の3D CADモデル