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千島海溝調査航海で野生のオットセイと遭遇(動画有)

 2021.4.2~2021.4.10に超深海調査航海で北海道・千島海溝までいってまいりました、松本亜沙子です。

 船の運航スケジュールで今年度最初の航海になりました。前回と同じくコロナPCR検査を事前に行い、結果待ちを含めて乗船日の4日前までは自主隔離という体制で、乗船二週間前から外出自粛となりました。

 横須賀での乗船時は気温が24℃にもなりましたが、太平洋岸を北上するとどんどん気温、水温ともに下がっていき、最終的には最低気温は零下を記録したタイミングもあり、水温も1.6℃と、水深2000 mの深さよりも表面水温の方が低いという寒さになりました。昨年10月の航海では北海道厚岸沖でも水温が14℃もある状態で、そのため昨年はサンマが全然採れないという状況になっていたと思われるのですが、今回の航海はとても寒かったです。

 調査対象の超深海(水深6000 m以深)では基本的に水温はほとんど変動しません。一方で表層の水温は、太陽や黒潮などの影響によって大きく変わります。黒潮は南からあたたかい海水を運んでくるのですが、北上し、千葉沖や宮城沖あたりで大きく東に曲がります。曲がる場所は毎年異なりますが、曲がるあたりで北からの寒流とぶつかり、そこが豊かな漁場となります。黒潮が曲がってしまった北側では北からの冷たい海水の影響の方が大きくなります。図は海上保安庁によるこの時の黒潮の流れです。

 今回はその黒潮の曲がった北側に越えたため、本州近辺では見ることのできない北の寒い地方ならではの生き物を航海中に見ることが出来ました。それは、オットセイです!

 オットセイとアシカの違いは、耳たぶがあるとか、ヒレの先がどうとか、いろいろな判別ポイントがあります。甲板にいるときにいきなり現れたので、陸からはかなり離れた地点だったのでとても驚きました。ただ、ニホンアシカはすでに絶滅したと考えられているので、ほぼほぼオットセイの可能性が高いと考えています。ニホンアシカだった場合は逆に野生の絶滅種の大発見になってしまいます。写真の最大ズームで、耳たぶとヒレの先はわかりますでしょうか…

 超深海の研究は2006年からスタートしましたが、2007年の航海で、世界初の超深海での生きた魚を撮影した際に、サイドワークで採集した標本が新種記載されました。なおこの時の航海については拙著「海洋生物学の冒険」を読んでいただければ嬉しいです。

 今回も低気圧の影響が大きかったのですが、予定していた調査をいろいろと行うことができ、大変幸運な航海でした。コロナ禍の中、無事に航海を行うことができたのはひとえに関係者の皆様のご尽力のおかげです。ありがとうございました。

松本亜沙子