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「はやぶさ2」レーザー高度計のアライメント
「はやぶさ2」に搭載されているレーザー高度計(LIDAR)は,レーザーをターゲットに照射し,反射光が戻ってくるまでの時間からターゲットまでの距離を測定します。ターゲットまで20km離れていても距離が測れるように,射出するレーザーも,反射光を検出する装置の視野も細くしぼっています(*1)。
ロケットで打ち上げられた後に,ターゲットがない宇宙空間でレーザー高度計が向いている方向を確認するのはとても困難です(*2)。
我々は,2015年末に「はやぶさ2」が地球に接近することを利用して,地上から射出したレーザーをレーザー高度計で検知するという実験を行いました。「はやぶさ2」の姿勢を少しずつ変えながら実験を繰り返した結果,距離670万km(*3)での信号の検知に成功しました。これによって,レーザー高度計が向いている方向を確認することができました。
地上と探査機の間で,レーザーを使って情報を伝える技術は様々な応用が期待されています。今回得られたデータを詳しく解析することで,「はやぶさ2」ミッションのみならず,今後の深宇宙探査にも役立てていきたいと考えています。
今回の実験には,JAXA,国立天文台,情報通信研究機構,千葉工業大学が参加し,オーストラリア宇宙環境研究センターの協力のもと行われました。
詳しくははやぶさ2プロジェクトのページをご覧ください。
*1 角度でいうと,およそ0.1度。1km先でも広がりは1.5mしかありません。視野を広げてしまうと,レーザー以外の要因の光が入ってきてしまうため感度が悪くなります。
*2 ロケットでの打ち上げでは強い振動がかかるため,装置が向いている方向は打ち上げ後に確認する必要があります。しかしレーザーは直進性が良いので,kカメラなどで横から見ても見えません。SF映画のようにはいかないのです。
*3 地球から月までの距離のおよそ17.6倍,地球168周分で,光の速さでも片道20秒以上かかります。