プロジェクト紹介

搭載機器

小型搭載型衝突装置(Small Carry-on Impactor: SCI, 通称「インパクタ」)

2kg の銅の円盤(ライナ)を火薬の爆発によって瞬時(1msec以内)に球殻状に変形させ2km/sに加速し、小惑星に衝突させます。PERCチャンネル「はやぶさ2」搭載観測機器解説Vol.2「SCI&DCAM3」編もごらんください。

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衝突装置の目的は、大きく分けて二つあります。まず一つ目は、小惑星上に人工クレーターを形成することで、小惑星内部を露出させることです。この露出させた内部をカメラなどでリモートセンシング観測し、太陽系初期の情報を保持していると考えられる小惑星の内部物質・構造を調査します。さらには人工クレーターの底あるいは周囲にタッチダウンし露出あるいは放出された「新鮮な」内部物質をサンプリングすることになります。もう一つの目的は、クレーター形成過程そのものの調査にあります。太陽系の歴史は衝突の歴史と言っても過言ではなく、天体衝突の科学は太陽系の起源と進化を理解するうえで重要です。これまで地球上の実験室で行われてきた衝突実験が、「はやぶさ2」衝突装置によって初めて本物の小惑星上で衝突実験を行えるわけで、天体衝突の科学を推進するうえで絶好の機会ととらえています。

ただし、やみくもに衝突させれば良いというわけではなく、成果を最大限に引き出す戦略を立てておく必要があります。この戦略検討の主軸を担ったのが和田上席研究員です。衝突装置による人工クレーター形成における難点はいくつもありますが、その一つは、「どんなところに衝突するか分からない」です。実際に行って見るまでは「1999 JU3」表面がどうなっているかもわからない上に、衝突装置の分離時の速度誤差などによって狙ったところに当たるとは限らないのです。したがって、砂場に衝突したら、一枚岩に衝突したら、ふわふわの粉体層に衝突したら、…とあらゆる場所を想定して、形成されるクレーターの大きさや掘削物の放出の様子を検討しておく必要があるわけです。和田上席研究員はそのような検討をこれまでの衝突実験やシミュレーション結果を駆使して行ってきました。また、最新の流体コードを用いて黒澤研究員が衝突装置によって形成されるクレーターのシミュレーションを行っています。さらに衝突装置運用の最大の難点は、衝突の瞬間を母船である「はやぶさ2」からは観測できない、ということです。衝突装置が起爆すると破片が四方八方に飛び散ります。その破片が「はやぶさ2」本体に当たるリスクを避けるべく「はやぶさ2」は小惑星の背後に隠れるように退避してしまいます(十分退避した頃合いに合わせて衝突装置は起爆します)。せっかくの「衝突実験」なのですから、その瞬間を見逃すことはもったいない、掘削物の放出過程は内部構造を反映し豊かな情報をもたらしてくれるはずです。そこで「はやぶさ2」から観測できない衝突の瞬間を観測すべく用意したのが「分離カメラ」です。

分離カメラ(Deployable Camera 3: DCAM3)

分離カメラは、DCAM3と呼ばれ、小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS」に搭載された分離カメラDCAM1、2の後継機と位置付けられています。今回「はやぶさ2」搭載に当たっては、新たにサイエンス観測用に広視野高解像度カメラ(DCAM3-D)も装備されています。カップラーメンほどの大きさの筐体の中に、2種類のカメラが搭載されているのです。千葉工大は、このうち、DCAM3-Dの開発に参加しています。

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衝突装置の爆破による破片を避けるために、「はやぶさ2」の母船は退避しますが、その途中で「分離カメラ」を放出します。「分離カメラ」は、小惑星上の衝突予定地点から約1kmの宇宙空間から衝突の様子を観察します。DCAM3-Dは、爆破前の「衝突装置」と衝突地点の両方を視野に収めるために、74度(対角方向では105度)という広視野を持つカメラです。空間分解能は、1km先で約1mです。DCAM3-Dは、衝突装置がどの位置から射出されたのか、小惑星上のどの位置に衝突したのかを明らかにし、さらに衝突により放出される放出物(イジェクタカーテン)の形状や放出速度を観測します。

石橋上席研究員は、主にDCAM3-Dの光学系の開発に貢献しています。設計された光学モデルのシミュレーションによる評価を行い、和田上席研究員らにより設定された目指す科学観測に必要な性能が、設計上満たされていることを確認しました。また、光学系製造後には、光学系とセンサの詳細な焦点合わせや、各種の性能評価試験を実施し、設計されたとおりの光学性能が実際に達成されていることを確認しました。DCAM3-Dは新規開発要素が多く、不安も多かったのですが、非常に満足できる仕上がりとなりました。

レーザー高度計(Light Detection And Ranging: LIDAR)

PERCチャンネル「はやぶさ2」搭載観測機器解説Vol.1「LIDAR」編もごらんください。

レーザー高度計は、レーザーを小惑星表面に照射しその反射光が探査機に到達するまでの時間を計測することで、探査機と小惑星表面の間の距離(高度)を測る装置です。「はやぶさ2」は、普段は小天体からおよそ20キロメートルの距離を保つように運用されるのですが、小天体表面を詳細に観測する場合、着陸機や衝突装置を分離する際、また小惑星の表面からサンプルを採取する際には探査機の高度を調整する必要があります。このため、「はやぶさ2」に搭載されるレーザー高度計には、距離25キロメートルから30メートルまで、4桁に渡って距離を測ることが要求されます。この要求に答えるために、レーザー高度計は遠距離用と近距離用のふたつの受光部を持ち、またそれぞれの受光部にかける電圧も変動させられるようになっています。天体までの正確な正確な距離を測ることは、天体の形状モデルの作成や、天体の重力加速度から天体の密度の算出のために必要不可欠です。

レーザー高度計の主な役割は距離を測ることですが、それ以外にもアルベド観測、光リンク通信やダストの検出にも使われます。アルベドとは光の反射率のことで、物質によって異なります。光リンク通信とは、光を使った通信のことです。将来的には光の明滅だけで情報を伝えられるようになることが目標ですが、「はやぶさ2」のレーザー高度計を使った光リンク通信では、地球から特定の周期で明滅する信号を送り、衛星側ではその周期を読み取ることで、搭載された時計の正確さを確認します。

レーザー高度計を使ったダストの検出は、千秋上席研究員が中心となって機能を追加したものです。レーザー高度計は、計測する距離の範囲が広いため、検知できる光の強さには4桁(10000倍)の幅があります。この特徴を生かすと、光路上に存在するダストからの微かな光を検知することができるのです。

小惑星は重力が小さく、大気も持たないため、その周囲にはダストが浮遊している可能性があります。しかしこれまでに、小惑星の周囲で直接ダストの存在を捉えた例はありません。「はやぶさ2」のレーザー高度計がダストを捉えることができれば、世界で初めての観測となります。

光学航法カメラ(Optical Navigation Camera: ONC)

光学航法カメラは、「はやぶさ2」とターゲットとなる小惑星1999 JU3 との相対位置関係を把握し、「はやぶさ2」を小惑星に誘導するための撮像を行うとともに、科学観測用に小惑星表面の詳細画像を撮像する役割も担っているデジタルカメラです。3台のカメラと、カメラをコントロールするパーツで構成されています。カメラのうち2台は視野角60度の広い範囲を見ることができるモノクロカメラで、もう1台は8種類の波長(色)で小惑星を見ることができる望遠カメラです。これら3台のカメラを使い分け、小惑星がどのような形状でどの向きに自転しているか、地表面の色の違いからどのような物質がどこに分布しているかなどを調べます。

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光学航法カメラは、「はやぶさ2」のいわば「目」のような存在であり、他の観測機器の観測個所がどのような場所であったかを知るためのサポート観測や、タッチダウン(小惑星への着陸)時の試料収集地点の撮像といった特殊な観測も行います。多岐にわたる観測を成立させるため、光学航法カメラの観測はプログラム可能なものとなっています。山田研究員は、光学航法カメラの開発に参加するとともに、このカメラおよびコントロール装置間のやりとりを熟知し、「観測プログラム」と呼ばれる各観測時のカメラの動作の順番や取得画像を用いた機上画像演算処理手順を考え、これを実装しました。

「観測プログラム」は写真一枚を撮るような単純なものから、複数のカメラを用いて多数の撮像を実施していくような複雑なものまであります。複雑なものの一例として衝突装置を分離する際に実施する観測がありますが、衝突装置担当の和田上席研究員や中間赤外カメラ担当の千秋上席研究員などPERC内に関係機器担当者がいることもあり、ひざを突き合わせて検討することで他の複数機器の動作と連携した複雑な観測プログラムも効率よく準備することが出来ました。

中間赤外カメラ(Thermal InfraRed Imager: TIR)

中間赤外カメラは、小惑星からの熱放射を2次元で撮像することで小惑星表面の温度分布を計測する装置です。サーモグラフィと言えばイメージしやすいでしょう。

地球と異なり、大気を持たない小惑星の表面の温度は、太陽の光が当たると急速に上昇し、日が沈むと下がります。しかし温度の上がり方、下がり方は太陽光の吸収率や表面の物理状態に依存します。黒っぽい物質は白っぽい物質よりも温度が上がりやすいことはよく知られていますが、このほかに、熱を伝えやすい物質は表面で受けた熱が地下に運ばれてしまうために温度が上がりにくいという特徴があります。一方で、熱を伝えやすい物質は陽が傾いても地下からの熱をくみ出すことで冷えにくくなります。熱の伝えやすさは物質の状態で決まります。つまり、岩石のように中身が詰まった物質は熱を伝えやすいのに対して、砂のように隙間の多い物質は熱を伝えにくいのです。このことから中間赤外カメラは、太陽高度に応じて表面温度がどのように変化するのかを調べることで、写真で見るだけではわからない、表面物質の状態を読み解きます。もちろん、「はやぶさ2」が安全に小惑星表面にタッチダウンしてサンプルを採取するには、あらかじめサンプル採取地点の温度を知っておくことが必要です。

中間赤外カメラによって得られた画像から迅速に、小天体表面の熱物性を求め。今後の温度分布を予報するためには、あらかじめ幅広いパラメタで小天体の表面温度の分布と時間変化のシミュレーションを行っておき、どのようなパラメタの組み合わせが観測結果と会うのかを吟味します。千秋上席研究員は、表面温度の分布と時間変化を予測する数値シミュレーションを行うとともに、観測結果とどのような比較を行えば表面物性を決めることができるのかの解析手法の検討を行っています。

近赤外分光計(Near InfraRed Spectrometer: NIRS3)

近赤外分光計は、小惑星表面で散乱された太陽光を波長ごとに分けて、波長1.8ミクロンから3.2ミクロンの間の光の強度分布を測る装置です。プリズムを通って、虹色に分解された太陽光の、どの色が明るくてどの色は暗いのかを調べることに相当します。ただし、近赤外分光計が調べる光は、その名のとおり近赤外線なので、人間の目で直接見られる光とは異なります(人間の目が感知できる光の波長は0.4ミクロンから0.8ミクロン程度です)。

人間の目で見ると物質にはそれぞれ特徴的な色があるように、近赤外線で見た物質は、特徴的な色(波長ごとの光の強弱)があります。近赤外線分光計が計測する1.8ミクロンから3.2ミクロンの波長範囲では、水分を含んだ物質は暗く(反射率が低く)なることが知られています。これは水分子がその波長の光を吸収してしまうからです。この特徴を利用して、小天体の表面から水分を多く含む物質を発見してやろうというのがこの装置の目的です(NIRS3の「3」は特に水の特徴が強く出る波長である3ミクロンの「3」に由来しています)。水分を多く含む物質は、小天体の形成過程の痕跡を残している可能性があります。このため、小天体表面からのサンプル採取の第一候補となります。

3ミクロン付近の光の強度は、表面温度にも依存していることが知られています。このため、近赤外分光計は小天体表面の温度計としても利用できる事が期待されています。ただしこの装置は面的な温度分布を求める中間赤外カメラとは異なり、一度に一か所しか計測できません。このため、広い範囲を探索するためには、探査機の向きを変えて繰り返し観測する必要があります。

千秋上席研究員は、近赤外分光計によって得られたスペクトルデータを解析して、ノイズと表面温度に依存する信号を分離、小天体表面からの散乱光を抽出するためのソフトウェアの開発を、荒井上席研究員は、散乱光の特徴から小天体表面の鉱物や、そこに含まれる水分の量や質を解析する部分を担当しています。

サンプリング装置(Sampler: SMP)

「はやぶさ2」のサンプリング装置は「はやぶさ」初号機搭載のものとほぼ同一のもので、タッチダウンした瞬間に弾丸を小惑星表面に打ち込み、舞い上がった破片をホーン上部の格納庫(キャッチャ)で回収する、というものです。ただし、シール性能を上げてガスも密閉して持ち帰るようにしたり、キャッチャを2部屋から3部屋に増やしたり、ホーン先端に折り返しを付けて砂礫をひっかけて弾丸が発射されなかった場合でも回収を可能にする、など初号機から幾つか改良を加えられています。

このサンプリング装置によってどれだけの収率が見込めるのか?ということは地球帰還後のサンプル分析準備にとって重要な問題となります。そこで、実際に衝突実験や数値シミュレーションを行って回収率を見積もることを行ってきました。特に数値シミュレーションに和田上席研究員、衝突実験や砂の物性計測などに黒澤研究員が貢献しています。

探査ローバ(MINERVA-II2)

「はやぶさ2」から小惑星表面へ着陸させる着陸機・ローバは、ヨーロッパのチームが作成する着陸機「MASCOT」はじめいくつもありますが、PERCが関わったのはMINERVA-IIコンソーシアムというJAXA外の大学連合が制作しているMINERVA-II2です(これとは別に、JAXAが中心となって制作しているMINERVA-II1もあります)。「はやぶさ」初号機に搭載した探査ローバMINERVAの後継機という位置づけでMINERVA-IIという名称になっています。

小惑星表面のmmスケールのミクロな構造がどうなっているか?という情報は、サンプリング場所の選定や小惑星表層状態を知る上で重要であり、また回収された試料分析にも有用です。そのような情報は「はやぶさ2」本体からの観測ではなかなか難しいところです。そこでMINERVA-IIによる小惑星表面の超近接画像撮影に期待が寄せられています。PERCでは、MINERVA-II2搭載カメラの撮像試験に参加し、どういった設定で画像撮影を行うべきかの検討を行いました。

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