成層圏微生物採集実験:Biopauseプロジェクト

成層圏微生物採集実験:Biopauseプロジェクト

2016年大気球実験放球の様子(biopauseプロジェクト)

2016年大気球実験放球の様子(Biopauseプロジェクト)

研究の背景

大気上部の生物分布(成層圏、中間圏)は、地球生物圏の上端”biopause”がどのようになっているのかを知る上で非常に重要です。 宇宙から地球へ微生物やウイルスが入ってきているのか、逆に地球の生物が宇宙空間へ出て行くことがあり得るのかを、 知る手がかりになります。これまでに、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の大気球など様々な手段で調査が行われてきており、成層圏でも微生物が 存在する可能性が高いと考えられています。

ところが、ほぼ全ての先行研究では採取試料の分析をする際に培養のみ行って おり、培養できない種類の微生物を検出できない、浮遊している微生物の物理状態が判らない、等の問題がありました。また、採集方法の制約から、地上微生物の混入の可能性も完全には排除できていませんでした。

 

2016年度気球実験の目的

2016年度に行った我々の気球実験では、成層圏に浮かんでいる微生物を、新たに開発した地上微生物の混入の可能性が少ない採集装置を用いて採集し、培養法ではなく顕微鏡を用いて直接分析する こととしました。それにより、まずは新規開発した降下式インパクター型試料採取装置の実証を行います。さらに、採取試料の分析から、成層圏に微生物がどのくらい存在しているのか、存在しているとすればそれは何故か、というプロジェクトの目標への手がかりを得ることが目標です。これまで謎に包まれていた成層圏微生物の全体像に迫っていきたいと考えています。

 

 

実験の概要

気球を用いた成層圏での微生物採集の模式図。

気球を用いた成層圏での微生物採集の模式図

試料採集装置を大気球を用いて成層圏まで上昇させます。その後、気球を試料採集装置から切り離し、パラシュートで降下しながら成層圏の浮遊微生物を採集します。

 

採集装置

我々は大気球実験用に、地上における微粒子採取装置を参考に、降下式インパクター式試料採集装置を考案しました。パラシュートでの降下途中に装置 内部を通り抜ける大気中の微生物を試料採取板に衝突させ、捕獲します。この方式では、気球に付着 していた微生物による混入を防ぐことが可能です。

試料採集部の外観

試料採集部の外観

試料採集装置の全体像

試料採集装置の全体像

2016年度の大気球実験

我々実験チームは成層圏における微生物の採取実験を実施しました。実験は、JAXA宇宙科学研究所が提供する大気球による飛翔機会を利用し行われました。採取装置を搭載した大気球は、2016年6月8日未明に大樹航空宇宙実験場(北海道広尾郡大樹町)から放球され、千葉工業大学が開発した微生物採取装置は予定通りに作動し、その後の装置回収にも成功しました。現在、採取された微生物試料の初期分析に取りかかっています。

大気球放球の様子

大気球放球の様子

海に着水した採集装置を無事回収

採集装置の着水の様子。この後、漁船で無事回収できました

 

分析手法、期待される成果と今後の展望

採取された試料を蛍光顕微鏡で観察することで、浮遊微生物 と非生物浮遊粒子とを判別し、培養できない物を含めた成層圏 微生物を検出します。また、微生物が単独で浮遊しているのか、 凝集体という微生物の固まりとして存在しているのかを、判定 します。これは、なぜ成層圏に微生物が存在できるのかを理解 する上で非常に重要な情報です。また、本実験では、蛍光顕微 鏡と併せて、電子顕微鏡を用いることで、非常に小さい浮遊微 粒子の観測を行い、試料採取の効率を検証します。我々は、採取装置内から微生物の試料を顕微鏡で検出することに成功しました。
本実験は、降下式インパクター型微生物採取装置を用いた 初めての研究例であり、試料採取の実証試験も兼ねています。 将来的には、今回実証された採取装置を並列に複数個搭載 して大気球実験を行うことで、成層圏微生物の鉛直分布の測定 を計画しています。それにより、成層圏生物の動態を理解すると ともに、地球生物圏の上端がどのようになっているかについて の知見を得たいと考えています。

 

 

※ 本プロジェクト(Biopauseプロジェクト)は、PERCがモンゴル他で行っている小型気球・中型気球を用いた宇宙塵採取実験とは、科学目標も実験手法も全く異なります。それぞれ独立に立案・実行している、別々のプロジェクトです。

 

お問い合わせ

大野 宗祐 (オオノ ソウスケ)
千葉工業大学 惑星探査研究センター 上席研究員
〒275-0016 千葉県習志野市津田沼2-17-1
TEL/FAX:047-478-0320 / 047-478-0372
E-Mail: ohno[at]perc.it-chiba.ac.jp(※[at]を@に置き換えてください)

 

 

ページの先頭へ