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はやぶさ2 航法カメラを用いた地球・月撮像成功!!

2015年12月3日に地球スイングバイを成功させ、いよいよ小惑星「 Ryugu」 への航海を始めた「はやぶさ2」。スイングバイたのめの地球接近の機会を利用して、搭載機器を用いた観測を実施しています。

私が関わっている光学航法カメラ(ONC)は三つのカメラからなるシステムです。そのうちの望遠カメラ(ONC-T)を用いて2015年11月26日に観測を行いました。

はやぶさ2の運用は、相模原市にある宇宙科学研究所の管制室から、日本国内や海外にあるアンテナを用いて実施されています。撮像運用などを行うときは、宇宙研の管制室・運用室に出向き、担当しているカメラが正常に動作しているかチェックするために立ち会います。この日は最初臼田宇宙空間観測所(UDSC)の64mアンテナを用いた運用中に撮像を実施しました。他の観測や探査機をスイングバイの為の姿勢に変更するオペレーションも行ったため、画像データを探査機から地上に下すのは続く海外アンテナ局まで待つこととなりました。

観測のためのコマンドは一か月程度前から計画を立て準備をしたものです。慎重に何度もチェックをしており間違いはないだろうという自信とは裏腹に、なにかミスをしていないだろうかと心配しつつデータが下りてくるのを待ちました。いざデータが下りてきて、モニタ上に映し出された地球は、白黒画像で雲と思しき明るい模様が判別できるだけの大きさに写っていました。早速、疑似RGB画像(※)を作成してみると….

図1. 「はやぶさ2」の光学航法望遠カメラ(ONC-T)によって撮影した月と地球。2015年11月26日撮影。(©JAXA)

図2. 2015年11月26日のONC-Tの撮影を模擬した画像(©PERC/Chitech)。

地球のどこが写っていたのかを確認しやすいよう、シミュレーショによる画像解像度を10倍としたもの。地球の左側にユーラシア大陸、右側にオーストラリアが位置することがわかる。

 

「青い」地球が画面に表示され大感激!!さっそく管制室・運用室にいたプロジェクトメンバと出来立ての地球と月の画像を鑑賞。こういう美しい画像がでていくると、一気にテンションがあがり、やる気がさらに出ると喜んでくださり、担当としてもうれしい限り、そして小惑星「Ryugu」に到着したらよいデータが撮れるぞと一安心。

宇宙空間にぽっかりと浮かぶ月と地球。周りの真っ暗な空間が、また味わい深いと思い、広報用には切り出さずにこのまま使ってもらうことになりました。

※ONC-T は小惑星表面を複数の「色」で観測するためのフィルタを持っています。今回はそのうち6つのフィルタを用いて地球と月の撮像を行いました。このフィルタは私たちが普段使うデジタルカメラの R・G・Bフィルタとは異なるものですが、近い「色」のフィルタをR・G・Bとみなして合成したものが図1の写真となります。

 

(山田 学)