PERCについて

所長挨拶

地球の枠を超え、宇宙のスケールで「生命」の解明に焦点を当てよう

千葉工業大学 惑星探査研究センター所長 松井孝典(理学博士)

1946年生まれ。
東京大学理学部卒業、同大学院博士課程修了。東京大学大学院新領域創成科学研究科教授を経て、2009年4月より千葉工業大学・惑星探査研究センター所長。日本の惑星科学の第一人者。

生命ってなんだろう、どのようにして誕生したのだろう、という新たな「知」の開拓が21世紀を境に生まれてきました。科学において、人間はつねに新しい「知」の地平を切り拓いてきたといえます。その対象は、当初の頃は地球という星がどのようなものかを追及することでした。そのため、太陽系の惑星を調べる必要があったのです。研究が進み、地球のことが大体わかるようになり、今世紀に入ってからは、地球全体よりもそこに住む「生命」について明らかにしようという動きがでてきました。現在では、地球上にしか生命の存在を確認していないわけですが、宇宙というスケールで、もう一度生命というものに研究の焦点を当ててみようという動きに変わってきたのです。その「知」の体系のことを「アストロバイオロジー」と呼んでいます。これこそ私の研究テーマなのです。「アストロバイオロジー」は、もともとアメリカのNASAが命名した言葉ですが、21世紀の科学の根幹を成す学問になると私は思っています。

20世紀までにわれわれ人間が確認した事象はいくつかあります。学問分野でいえば、物理学や化学は宇宙の中で成立するということを確かめました。つまり物理学や化学を利用することで、宇宙のすべてを理解できる。もっといえば、物理学や化学は宇宙において「普遍性」があるといえます。一方、いまの生物学はどうでしょう?対象となる生物は地球上にしかないので、宇宙スケールで成立する学問にはなっていないのです。私自身、理論上でいうと、地球上だけではなく宇宙にも生命というものは、たくさん存在するはずだと思っています。それを実際に確認しないとスタートしない。それが21世紀の人類の科学的課題になるだろうと思っています。その課題を解くのが、アストロバイオロジーという学問であり、宇宙のスケールで「生命の普遍性」を明らかにしようとするものなのです。宇宙には地球とよく似た環境や物質がいくつもあり、生命が存在する世界が他にあっても不思議ではありません。20世紀の終わり頃から、実際に地球と似た天体が銀河系の中で見つかり始めています。そこで今後は、宇宙規模で生命の起源などをみんなで研究し、論じようということになってきたのです。

impactIMPACTに掲載された記(クリックして拡大)

先端技術やロボット工学を応用し、惑星探査プロジェクトを全学で推進

私たちは、2009年4月から千葉工業大学で「惑星探査研究センター」を始動しました。惑星探査とは、無人の探査用衛星の中にロボットの観測装置を搭載して惑星に飛ばし、さまざまな調査を実施するものです。その惑星の岩石がどのような物質でできているか、地形がどのように形成されたか、有機物の有無や生命の痕跡までを、ロボットを使って探査するのです。

まず、惑星探査のためのプロセスである種々の実験や理論的な研究を積み重ねていくことが先決です。惑星環境を模した実験装置や新しい観測機器の開発など、未知の領域も多いため、先端的な科学技術が要求されます。そのためには、日本のJAXAをはじめ、NASA(米国)やESA(欧州)など国内外の国家的プロジェクトと連携した活動が必要です。また、千葉工業大学には、高度なロボットを開発するfuRo(未来ロボット技術研究センター)や学科の枠を超えた工学技術の連携体制が整っています。われわれの知識の領域を広げるために、今後はこの大学の優れたロボティクスや先端技術を応用し、惑星探査の研究に役立てようと考えています。

学問では何のために研究をするのかを明確にすることが大切です。「惑星探査研究センター」の目標は、地球そして生命の起源を知り、未来を探り、人類にとって新たな「知」の世界を切り拓いていくことにあります。そのためには、私たちは「地球人」にとどまらず、惑星や生命のことをもっと広い世界、宇宙からみることのできる「宇宙人」になる必要があると考えています。このセンターを拠点に、新たな「知」への探究心が、果てしない宇宙へと広がっていくことでしょう。

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